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むつ市民の幸福度をブータンの「国民総幸福量」の物差しで測ったら

 

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イデちゃんのチームが作った質問。むつ市民の幸福度は? (撮影・マツミナ)


 
ClassQ青森県むつ市の中間貯蔵施設について議論する中で、ふと思い出しました。ヒマラヤの麓にあるブータンが打ち出した「国民総幸福量」(Gross National Happiness=GNH)。15年ほど前に国際社会の注目を集めました。

GNHは、国の力や進歩を「生産量」ではなく「幸福量」で測ろうという考え方で、「物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさも大事」という考えに基づいています。人口も資源も限られた小国が、物質的指標のみに依拠していたのでは存在感がなくなるという危機意識から生み出した「国家戦略」とも言えます。それが、経済的には「勝ち組」とされる欧米の先進国から注目されたのです。

幸福という概念は主観的な部分が大きく、一律の尺度で測れるような代物ではありません。それでもブータンでは「持続可能で公平な社会経済開発、環境保護、文化の保存と推進、良き統治」をGNHの4本柱とし、「心理的な幸福、国民の健康、教育、文化の多様性、地域の活力、環境の多様性と活力、時間の使い方とバランス、生活水準・所得、良き統治」の9分野を指標としていま。(外務省HPから)

2005年の国勢調査では、ブータン1人当たりの国民総所得1,920米ドル(世界銀行)と低水準であったにもかかわらず、「幸せ」と回答した国民は約97%を占めました。ところが2010年の国勢調査では「幸福度」が41%に低下したそうです。この国にも急速な市場経済の波が押し寄せ、住宅建設ラッシュ、高額の住宅ローン、物価高騰、核家族化などが起き、SNSの発達により他国との比較が容易にできるようになったことも変化の要因となったという指摘もあります。

 本州最北端の下北半島といえば「大間のマグロ」他に知られているのは「恐山」くらいでしょうか。むつ市から進水した原子力船「むつ」も廃船となりました。けれども、物質的には低くはないようです。何年か前に参加したバスツアー(募集パンフレットでは「秘境下北半島巡り」と謳われていた)で目にした小中学校や公共施設は、かなりお金が掛けられているように見えました。それらが、耕作放棄地となった田畑と隣り合って鎮座している風景は、なんとも不思議な風景だったことを覚えています。

 ブータンGNHの物差しで、むつ市の幸福度を測ったらどんな結果が出るでしょうか。電源三法交付金で豊かになったように見える下北の町と、市場経済の波に洗われて幸福度の低下したブータンと。秘境を売りにする故郷に突然降りかかった「中間貯蔵施設の共同利用」の話に市民は幸福度の高まりを予感することができるでしょうか。(イデちゃん)