先生を増やして「ガッコウ」の形を変えよう
公立小学校の1学級当たりの上限人数が2021年度から引き下げられ、2025年度には35人になるそうです。約40年ぶりの上限引き下げです。新聞各紙は「少人数学級による指導効果が検証されていないとする財務省の壁は高く、実現しなかった。それが新型コロナウィルスの感染拡大による3密対策が後押しとなって財務省が折れた形になった」などと書いていました。でも、あと5年もかけていたら、現在進行中の新型コロナウィルス感染拡大の防止に役立つのかという疑念が残ります。コロナ対策の無策ぶりで下がった内閣支持率の回復を狙った政策的判断と言ったら、ゲスの勘繰りって笑われるかな。
財務省が折れたのは、ソロバン勘定の結果です。ある新聞がこんなふうに書いていました。
「教職員定数の上限を引き下げることによって、学級数や児童・生徒数で決まる基礎定数が5年で約14000人増となる一方で、現在配置している加配定数からの振り替えや少子化により新たな財政的負担はほとんど生じない」
これなら財布はいたまない。あれほど頑なに定数改善を拒んできた財務省がOKし、少人数化の道が開かれたことはいいことだと思います。
現場は定数引き下げを歓迎する一方で、「学級増で教室が足らなくなる」「教員の大量採用で質が下がる」と言っているようです。
でも、これもナンセンス。一つの教室に先生が一人いて、生徒たちを並べ、教科書を開かせて……とこれまでと同じ風景を続けようとすれば、教室不足も心配になるでしょう。
「少人数学級による指導効果のエビデンスを示せ」という財務省の壁をなかなか崩せなかったのは「1学級当たりの人数」にこだわったからでしょう。定数が少なければいいというものではないという指摘を覆せませんでした。「1学級当たりの人数」は教員総数を算出するための手段に過ぎません。それによって学級と担任を固定すれば、当然、教室数やその成果が問題になったりするのです。むしろ学級編成*の権限を学校に下ろし、子どもの実態や必要に応じて学級人数などを自在に変えられるようにすればいいのにね。
教員定数を増やすのは、学校の指導・運営体制を改善し、新しい課題に柔軟に対応できる新しい学校づくりを進めるための必要条件なのです。先生を増やして「ガッコウ」の形や「センセイ」の役割を大きく変えることです。屋根のない学校作りの一丁目一番地です。(イデちゃん)
*学級編成と書きましたが学校教育法では「学級編制」とされています。「編制」と「編成」。この微妙でややこしい関係については、後日書くことにしましょう。