idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

考え、悩み、ことばを選ぶ

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雪で煙る妙義山(撮影・イデちゃん)

 先週末、関東甲信越地方に大雪警報が出されました。急用で長野にいた私は帰路の雪を心配していました。少し前に起きた関越道や北陸道のような大渋滞になったら大変です。高速道路の入り口で冬用タイヤ装着のチェックを受けましたが、明け方降った雪は既に除雪されており、渋滞なく帰ることができました。途中、立ち寄ったサービスエリアは駐車している車も疎らで、霧立ち込める妙義の山塊は山水の水墨画を見るようでした。

 

 さて、「意味もろくに調べず論文を書く学生」の「言葉に対する愛着のなさ」を嘆くミナ先生にいい話を教えましょう。小学校の校長の時に出会った1年生の算数の時間の一場面です。

 

 グループの3人で話し合いながら、繰り上がりのあるたし算の問題を作っていました。

 「しいのきが8本ありました。それから、しいのみが9……」

 「9ほん? じゃないよね」

 「9こ、だよ」

 「そうだね」

 「……しいのみが9こありました。ぜんぶで、なんこになるでしょう」

 「ちょっとまって、なん本じゃないの。」

 「だって、しいのみは9こだよ。」

 どうやら単位の違いに戸惑っているようです。

 さあ、どうするとながめていると、

「じゃあ、ぜんぶで、いくつになりますかってしたら?」

 苦心惨憺して出した結論、決して正解とはいえないけれど、この発想のやわらかさは大したものです。なるほど。お主、なかなかやるな、って感じで、いい気分になりました。(S区立K小学校「学校だより」1996年11月号校長巻頭言から一部転載)

 今だったら迷わず「いいね」です。

 

「頭の中をかき回し、言葉や文字を引きずり出す」のは大変な作業です。唐の詩人は月下の門を前にして、「推す」がいいか「敲く」とすべきかと呻吟し、先達に助けを求めました。小学1年生も考えました。「本」にするか「個」にするか、that is the question. 考え、悩み、3人のやりとりの末、選んだのが「いくつ」だったのです。

 「主体的、対話的で深い学び」の推進なんて掛け声が聞こえ始める以前、25年も前の話です。(イデちゃん)