無神経で想像性に欠ける発言
何回か前に「夜の銀座に繰り出す国会議員の想像力の無さに呆れる。社会のあらゆるところで劣化が進んでいる」と書いたばかりでしたが、それを証明するようなニュースが世界中を駆け巡りました。想像を絶するほどの想像力のなさに驚くばかりです。会見の様子をテレビで見ながら、もしかしたら、この方はオリンピック憲章を読んだことがないのでは、という疑念が浮かびました。だから、あのような無神経で想像性に欠ける発言をするのではなかろうかと。見てはいるけれど読んではいない。憲章に書かれている言葉を読んで理解し、自分の頭の中に落とし込んでいないから、憲章の精神に反するようなことを言ってしまうのではないのかと思ったのです。
「わかる」と「わかったつもり」は似て非なるものです。私の杞憂であれば幸いですが。
ふと、以前研修会で聞いた話を思い出しました。上野動物園に初めてカバが来た頃の話です。
カバに赤ちゃんができました。しかし、その頃日本にはまだカバに関する資料が乏しくて、飼育係の人たちはカバがどのようにして出産するのか知りませんでした。いろいろな本で調べたり、あちこち問い合わせたりしてもよくわかりません。
いよいよ出産の時が近づきました。カバはどこで赤ちゃんを産むのだろう。どうやってお乳を飲ませるのだろう。わからないことだらけです。中でも係の人たちを一番悩ませたのは、カバの住む池の水をどうしたらいいかということでした。カバは水中でお産をして、お乳も水の中で与えるのだそうです。体が大きいカバは陸上では自由がきかず、外敵から子どもを守ることができません。また、あの体型では乳房のある場所に子どもがもぐり込むことも困難です。だから水の中でお乳を与えるのが、カバ
にとって一番安全で楽な方法なのです。
そうとは知らない飼育係の人たちはカバの赤ちゃんがおぼれたら困ると考え、池の水を抜いてしまいました。赤ちゃんはお母さんのお乳を飲むことができなくて死んでしまったそうです。
人の想像力がカバの知恵に及ばなかったというお話です。
人間は失敗から得た教訓や学びを次の機会に生かす知恵を持っています。動物園の飼育係が二度と同じ失敗を繰り返さなかったことはいうまでもありません。想像力は豊かな知恵の源です。(イデちゃん)