idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

「退学率」は誰の責任か

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鼻にご飯粒がついてるよ。気づいてる?(マツミナ)

 昨日に引き続き、退学について書きます。

 「退学率」は誰の責任か。ひょっとしたら「退学理由」から読み解けるのではないかと考え、「大学の実力」調査*で尋ねたことがありました。

 大学の回答によると、最も多かったのは「進路変更」(専門学校に進学、就職)でした。「他大学への進学」も合わせると「この大学ではなかった」が最も多いことになります。「経済的理由」はその次でした。

 大学や学生、退学者らに取材するうちに「第一志望でも不本意入学」という現実があることを知りました。第一志望といえば、本人が「一番行きたい大学」。とはいえ、本人だけでなく、親や高校の先生も浪人は避けたいために、「合格圏内」がゴールに設定されます。「行きたい大学」ではなく「受かる大学」です。そこに「早く決めたい」という気持ちが加わると、指定校推薦や総合選抜(かつてのAO)など秋には合格が決まる入試枠を目指すことになります。合格が決まった生徒の大半は、入学までの半年近くをぼんやり過ごすことになります。よほどしっかりした目的意識がなければ、この時期を意欲的に乗り越えることは困難です。入試方法別の退学率をみると、一般入試よりも推薦入学の方が高いのは、そういう事情が絡んでいます。

 次いで多い「経済的理由」にしても、全てを「貧困」と結びつけていいとは言い切れません。退学理由がわからないと「経済的理由」と処理してしまう大学は珍しくありません。一方の学生も、「経済的理由」を方便として使っている傾向もあるようでした。

 

 退学率の責任を誰かに押し付けることはできません。けれども「誰も責任がない」と放置しておいていい問題ではない。まず大学が、退学率などの学生の状況をデータで公開し、説明することからでないと、この問題が本当に意味していることはわからないでしょう。

 学生は可能性の塊です。そののびしろを大事にするためにも、よりよい進路選択をしてもらうためにも、退学問題について対話し始めてもいいのではないでしょうか。(マツミナ)

 

*「大学の実力2019」(中央公論新社刊 19ページ)