idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

学びの場から「有毒ガス」を追い出す

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今日はプリンシュー。中にプリンが入っています(マツミナ)

   今朝、近所の池で「カラスの行水」を見ました。「入ったかと思ったらすぐ出る」どころか、かなり念入りでした。通りかかったおばあさんが「寒くてもきれいにする。えらいもんだ」と感心していました。

 退学率が察知する「有毒ガス」は「学びの衰退」ですか、イデちゃん。なるほど。となると、こちらは行水ではなく「換気」で有毒ガスを追い出しましょう。まずは、しっかり学ばなければ進級・卒業できないシステムの構築ですね。勉強しない学生は、留年させるのです。こういう話をすると、難色を示す学長が少なくありません。「留年者が増えると、補助金がカットされる」と心配するのです。

 日本の大学の収容定員は厳しく管理されています。超過しても少なくても補助金がカットされます。けれども成績不良による留年者数については、例外規定を設けています(「私立大学等経常費補助金取扱要領」51ページ参照)。

 厳しいシステムにするなら、学生が時間をかけて学べるような環境整備が不可欠です。日本の学生は「学修時間が短い」と各種のデータが証明しています。総務省によると「小学生より短い」(平成28年社会生活基本調査)。米国の学生と比べた調査でも、日本の学生の学修時間が短いことが判明しています。

 学生の肩を持つわけではないけれど、現状では長くしようがありません。学期中に履修する授業コマ数が多すぎるのです。先日、ある国立大学の学生たちと話していたら、大半が12コマから15コマもとっていました。

 1単位の学修時間は45時間が基本です(大学設置基準)。単純に1科目2単位で計算すると

 (45×2)×15=1350

授業の時間を含めると、15コマとったら学期中に1350時間の学修が必要です。1学期15週として、1週間当たりの学修時間は90時間。土日は休むとして、月曜から金曜までの5日間、毎日18時間もどうやって勉強するのでしょうか。睡眠や食事、入浴の時間もとれません。大学設置基準通りに勉強させたら「ブラック大学」です。

 学修時間を長くしたいのなら、授業科目数を制限する一方で、一つの授業の単位数を実際に勉強する時間を見込んで重くすることです。たとえばClass Qが6単位だっていい。学生は週に15コマも取らなくていいし、簡単に履修も辞退しなくなるから、学期末まで必死に勉強するはずです。 

 

 大学だけ「しっかり学べ」では、学びの場の空気入れ替えにはなりませんね。小学校から「学ばなければ落第」システムを導入したらどうでしょう。

 かつて山崎正和さん(故人)が問題提起しました。日本の教育方針を決める中央教育審議会会長も務めた人が、読売新聞一面で大改革を求めたのです。題して「教育改革への注文 高学歴・低学力の風潮正せ」。分数のできない学生、新聞1面のトップ記事も読み通せない学生がなぜ大学にいるのか? 「(その理由は)小・中学校の教育が質的に不十分であって、学力の備わらない生徒を高校に送るからである。戦後の小・中学校には落第や留年の制度がなく、学業の遅れた生徒でも『寒天突き』のように卒業させてしまう。教師の能力や熱量にも問題があるが、親の関心も子どもの勉強より卒業証書に傾いている」(2013年4月4日)

 掲載日の翌日、文科省の課長クラスに感想を聞きました。「気持ちはわかるけれど、ムリ」「困ったことを…」。反応は今ひとつでした。

 カラスみたいに、さっと飛び込んで洗い流せるようなものではないみたいです。(マツミナ)