idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

生き残る大学

f:id:Question-lab:20210228061857j:plain

人影のない昼下がり。正面に東京駅(イデちゃん)

 「羊頭を掲げて狗肉を売る」とまでは言いませんが、「2年後には90%の確率で壊れる400万円の商品」をこのまま売り続けたら、賢明な消費者から愛想を尽かされる日は近いでしょう。そこで「岐路に立たされた大学の生き残りをかけた改革が始まりました」と続けるのが常道なのでしょうが、今日はへそ曲がりな方向に話を曲げてみます。

 

教育再生実行会議は2013年(平成25年)、「これからの大学教育等の在り方について」(第3次提言)という提言を公表しました。それによると、知識基盤社会における大学には「知の蓄積を基としつつ、未踏の地への挑戦により新たな知を創造し、社会を変革していく中核」としての役割を担うことを期待し、国家戦略として「日本国内において世界水準の教育を享受したり、日本人研究者が海外の優秀な研究者との国際共同研究を質量ともに充実したり」して、「世界に伍して競う大学の教育環境をつくる」ことを強調しています。そして、「大学は教育内容を充実し、学生が徹底して学ぶことのできる環境を整備」して「学生を鍛え上げ社会に送り出す」べしと。「徹底して学ばせ鍛え上げる」ことには賛成です。それは大学の本分ですから。

しかし、前後を読んでみると少々気になることもあります。「技術と経営を俯瞰できる人材の育成を図るため、(略)自然科学・人文社会科学の基礎的素養、考える力、表現力など幅広い素養、さらには芸術等の文化的素養を育成するため、教養教育を充実する」。ここだけ読めば、高等教育機関としての大学の果たすべき役割として「教養教育」を充実することは至極当然であり、大いに期待するところです。

でも、よく読むとこんなことも書かれていますよ。「社会を牽引するイノベーション創出のための教育・研究環境づくりを進める。イノベーションの創出には、高い技術力とともに発想力、経営力などの複合的な力を備え、新たな付加価値を生み出していく人材の育成が必要です」と。だんだん見えてきましたね、国が示す「求められる大学」像、言い換えれば「生き残る大学」像が。そして、教養教育を充実するのは技術と経営を俯瞰し、新たな付加価値を生み出していく人材の育成のため、要するに「役に立つ」人材の育成のためなのだということも。

 「高い金出して使い物にならない教育を受けるより、社会に出てすぐ役に立つ技術や知識を身に付けさせた方がいい」と考えるのは学費を出している親だけではないようです。「社会を牽引するイノベーション創出のための教育」ができる大学には金を出すけど、それができない大学は「生き残りに必要な金は自分で集めなさい」と言っているようにも聞こえますが、そうだとすれば「400万円で90%の確率で壊れる商品」を売り続けるしかないのでしょうか。

 

 「パソコンにカメラとマイクがついてたんだ~」状態の教員たちが始めた授業も、多くの大学では機材費用は教員負担。カメラの切り替えなど機器操作をしてくれる助手もいない。それでも「八面六臂」で頑張る大学の先生の頑張りを応援しましょう。生き残りをかけた改革に「まず挑戦すること。結果はその後についてくる」(学生)ことを信じて。(イデちゃん)