idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

  「大学改革のデパート」からの脱却

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バターとフルーツの香りで疲れが飛んでいく。ありがとう(マツミナ)

 まもなく卒業する学生から手紙が届きました。たんぽぽの花をあしらった便箋に、丁寧な文字で3年間の思いをしたためていました。

 学生は2年次から「質問力を磨く(ClassQ)」を履修していました。途中からなぜか火がつき、社説の書き写しとコンセプトマップに熱心に取り組むようになっていました。「正解に早くたどりつく」のではない学びの楽しさに気づいたようです。手紙には「ミナ先生と出会い、自分に自信が持てるようになりました」と書かれていました。「先生みたいになりたいと思い、ずっと背中を追い続けています」という嬉しい言葉もいただきました。 

 ひたむきに学ぶ姿を見るたびに、苦い思いが胸に広がります。学生のひたむきさをまっすぐ受け止められる大学がどれほどあるだろうかと。「大学改革のデパート」となった、理念なき大学があまりに目につくからです。

 

 この30年間、日本では政府主導の大学改革が進められてきました。きっかけは、1991年の大学設置基準の縛りを緩やかにしたことでしょう。一般教育と専門の垣根をなくし、卒業要件に関する規定を大学に委ねました。大学・学部新設の要件も下げました。

 ただ、政府は完全な自由を大学に与えていません。大学審議会や中央教育審議会の答申などを通して、次々に方針を打ち出しました。

 

・「課題探究力」が大事(1998年、21世紀答申)

・大学は方針に基づいて教育し、基準に達した学生にだけ学位を授与しなさい(2005年、将来像答申)

・大学が組織ぐるみで教育力向上の取り組みを(2008年、学士力答申)

・学生が主体的に学ぶよう教育を質的に転換しなさい(2012年、質的転換答申)

・高校と大学が接続し、生涯を通して学ぶよう教育やシステムを整えなさい(2014年、高大接続答申)……。

 

 一方で、補助金付きの改革プロジェクトも動き出しました。後に「毒まんじゅう」と呼ばれるようになった一連の政策です。「Good Practise」をすれば補助金が出る、教育改革は稼げるという文化が根付いたのです。

 少子化にもかかわらず、大学数は増えている。受験生の奪い合いが熾烈を極めているところに「教育改革は稼げる」はおいしすぎです。さまざまな補助金付きの教育改革プロジェクトが全国の大学に広がりました。自分たちの大学の教育と整合性があるか、目の前の学生に必要かどうかにお構いなく。かくして、どの大学にも似たり寄ったりのプログラムが雨後のタケノコのごとく姿を現しました。どれも金の切れ目が縁の切れ目、補助金の期限と同時に消えました。巻き込まれた学生の存在に目もくれず。

 

 「考える先生」育成プログラムは、「大学改革のデパート」に並ぶ商品ではありません。教員を目指す学生にまっすぐ届くプログラムにしたいと考えています。教育現場を半世紀も耕してきたイデちゃんたちと一緒に、ひたむきな学生に胸を張れる内容を。学校で学ぶ、次の世代へのプレゼントにもなるはずです。

 

 学生の手紙には、地元の農家が作ったというお菓子も添えてありました。大地の恵みを丁寧に焼き込んだクッキー。食べると元気がふつふつとわいてきます。(マツミナ)