idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

先生になる

 

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宝物の手紙

 新学期が始まります。新しい出会いが生まれます。入学や進級を機会に新しい自分を見つけたいと思う人もいるでしょう。夢とか希望とか未来とか、そんな言葉がふさわしく響く時間が少しでも長く続いてほしいと願っています。

 五十余年前、私は小学校の先生になりました。初めて担任した子どもの保護者から届いた手紙を今も大事に持っています。長い教師人生の始まりを「生気溌剌たる教師になれ」と励ましてくれた「宝物」です。

 

 

〈「わだち」の創刊号拝見しました。父兄の一人として感想らしいものを書き送ります。

 紙面に先生のフレッシュな教師としての願いが滲み出ていました。また、正直な自己反省もうかがわれてお人柄が偲ばれます。

 私自身、3人の子の父親として、日頃「初心忘るべからず」、子供を愛し、社会に責任を負い、そして自分に忠実に良心を貫き、正義感をごまかさないと念じて生きています。

 先生と子供達の前途にどんな道が拓け、どんな山河が待っているでしょうか。教師と両親の両輪がつくる「わだち」は何を軌跡するでしょうか。両者をつなぐ心棒はぐらつきがちです。これをどう設定し、かつ安定させていくか。とにかく御健康で精一杯おやり下さい。父兄や校長先生や同僚先輩のことなど、あんまり気にせず、自分をさらけ出し体当たりなさることを希望します。そこに自らなる謙虚さも反省も伴うはずですから。

 うちの二郎は末っ子で甘えん坊ですが、負けず嫌いでありボス的能力がありそうに観察しています。それでいて大変な照れ屋なのは私の幼少期にそっくりです。この一年どうか先生の思う存分のご指導によって「逞しさ」(精神的自律心と積極性)を少しでも培っていただければありがたいと思っています。学識・知識はその上で初めて役に立つものでしょうから。 

新しい先生は男の先生だったと喜んでいる二郎です。故郷の信州の山河は素晴らしい春を繰り広げていることでしょう。都塵に汚されることなく、いつまでも生気溌剌たる教師でありますようお祈りいたします。

 今日は二郎の誕生日でもあります。「わだち」を拝見し、一筆走らせた次第です。〉1970.4.25

 

 長い間にインクの色は薄くなり、便箋にはシミも滲んでいます。読み直し、考えました。「先生を育てる」ものは何か。見えてきたような気もします。これから始まる「考える先生を育てる」プロジェクトを通して、一人の若者がどのように変容していくか看取りながら確かめていくつもりです。(イデちゃん)