idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

希望という名の

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小さな鳥が水面の風景を揺らす(マツミナ)

 今日は上智大学での「質問力を磨く(Class Q)」初回。1年ぶりの対面授業です。抽選を乗り越えてきた学生が集まりました。

 

 今回初めて、図書館内の会議室で開講しました。「三密対策」で教室が不足しているための窮余の一策だそうです。図書館内の会議室と聞いた瞬間に、アイデアが浮かびました。学生に「辞退するチャンス」をあげようと思ったのです。

 

 Class Qでは毎学期、約半数の学生が履修中止をします。教養科目で2単位だから、ラクに単位を取れる「ラクタン」だと目論む学生にとっては「コスパが悪い」授業だからです。

 チームワーク中心の授業で途中で履修中止されると、チームの学生には迷惑千万。それなら初回で辞退してもらおう。そこで授業の半ばに「今の自分を紹介できる本を、図書館の棚から持ってきて。履修をやめる人は戻らなくていいよ」と送り出しました。みんなの前での退室は難しいけれど、これなら気楽に去ることができるはずだと。

 

 結果から書くと、全員戻ってきました。好きな本、気になる本を手にして。「どこに何があるかわからなかった」1年生は手ぶらで。

 なぜ戻ってきたのでしょうか。多くの学生は、自分を変えるチャンスにしたい、質問力を鍛えたいという思いをリフレクションシートに書いていました。

 「目を合わせて人と対話をすることを難しい、恥ずかしいと感じていることに今日気づいた」

 「世界には問題が溢れていますが、私は問題意識を感じたことがありません。目を向ける勇気がなかったからです」

 「質問力がないのは、発想力がないからだと思っていた。(略)でも自分は人の話に興味を持つことができていなかったからだとわかった」

 コロナ下でのオンライン生活が、学生の何かを変えたのでしょうか。強い決意をリフレクションシートに綴る学生もいました。

 「学期末に先生を倒したい。『あっ!』と言わせたい。(略)考えることをやめてはいけない。先生に勝ちたいという気持ちとしんどいという気持ち。その間で揺れ動くことになる未来が垣間見えた」

 「単位が欲しいとかではなく、得るものがあるという期待のもと、来週この授業に来よう」

 床に車座で、呼ばれたい名前でお互いを呼び合い、対話を重ねる、という授業スタイルは、楽しいけれども学生を困らせたようです。

 「スカートで来てしまい、座りづらいなあと感じたので、火曜日はパンツデーにしようと決意しました」

 

 暗いニュースの多い日々に、こうした学生がいることは「希望」そのものです。

 確かに林達雄先生は書いていました。

 「大学の教師でいちばん滑稽なことの一つは、性懲りもなく四月の学期初めになると学生のことごとくが本格的な知識的熱意に燃え学問の蘊奥を極めようとして教室に集まってくるという錯覚に陥ることである」(「十字路に立つ大学」より再掲)

 私は甘いかも。でも希望は捨てない。新学期が始まりました。(マツミナ)