idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

メンターも成長します

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アメリカフウロ。下を向いて歩くのも楽しい(イデちゃん)


 ミナさんからの報告の続き、公立中学校でのやりとりです。

 「ところで、何をどうすればいいのですか」

 「何もしなくていいです。教える必要はありません」

預かる側にしてみれば、この学生をどう扱ったらいいのか、何を教えてあげたらいいのかと考えるのは当然です。学校の先生は教えるのが商売ですから。

 「自分で調べればわかるような質問には答えていただかなくて結構です。『君はどう思うの』って聞き返してください」

 二十歳そこそこの青年は中学校の校長室で交わされるやりとりをどのように聞いていたのでしょうか。 

 

 「そうなんだ」「だよね、わかる」

 よく耳にする若者の会話です。気心の知れた仲間同士の、相手の気持ちに立ち入らない、薄い皮に包まれたような中身のない会話に慣れてきた若者には、聞いたことのないやりとりだったかも知れません。

 校長室の大きなテーブルの対面に座って、校長と話す私の顔を見ている彼の表情から「自分はどんな扱いをされるのか」という緊張が伝わってきました。

 

 「教育実習生ではありませんから、授業の真似事はしなくて結構です。生徒と馴れ馴れしくさせないでください」

 学生を預かる校長、副校長も同じです。じゃ、どうすればいいのだろうという疑問と狼狽が表情に浮かびます。

 「しばらく、学校の中で、生徒や先生の様子を見させておいて下さい。そのうち、何か見えてくるでしょうから。何か思うことがあったら質問するでしょう」

 「学校にいればいろいろ見えるでしょう。多分、初めは物珍しさに惹かれて見ているだけでしょう。そのうちに、見る位置や見る対象が定まってくるかも知れません。初めに見たい、知りたいと思っていたものと違うことを見たくなったり、知りたくなったりするかも知れません。私たちの役割は、一人の学生の変容・成長のプロセスを、伴走しながら邪魔しないように観察し、学生自身が自分の変化や成長を自分で確かめる方法を一緒に考えることです」

 

 校長先生はそんな私の説明を受け止めてくれました。

 「とりあえず、やってみたら? 遠慮はいらないから。自由にやってほしい」

とんだ迷惑話を聞き入れてくれた中学校の校長・副校長に大感謝です。

 

 前にも書きましたが、このプロジェクトは予め用意した「考える先生像」に近づけるために教えたり働きかけたりすることではありません。自分自身で「考える先生像」を描き、それに近づくために何をすればいいか考え、自分を育てる取り組みです。私は20歳の学生が何を考え、何をして、どのように変容するか近くで見ていたいと思います。そして、彼とのやりとりを通して自分自身もどのように変わっていくか楽しみです。メンター・イデちゃんも成長するのです。(イデちゃん)