火がついた
「考える先生」プロジェクトに参加した学生が、中学校を訪問したその日にリフレクションシートを書いてきました。わざわざ「質問力を磨く(Class Q)」のリフレクションシートを使って。欄外には「考える先生プロジェクト」と大きく書かれています。授業時と同じように、三つのキーワードを書き込むことから始まっていました。
第1のキーワードは「教師像」。学生の前でイデちゃんや校長先生たちが話していた内容が響いているようです。「良い教師の型にはめられて育成されてきた教師は、現場で役に立っていない」――。学生はその言葉を聞きながら、「誰にとって『良い教師』なのか」を考えていました。生徒にとってか、保護者か、それとも上司となる校長や副校長にとってか。
第2は「課題」。校長から「とりあえず、やってみたら」と声をかけられ、これからの1年は自分の課題設定次第なのだと理解し、覚悟を決めました。
「1年間で少しでも多く学ぶためには、自分自身に課題を与え、1回ごとに絶えず振り返り続ける必要がある」
最後は「視点」。学生は、これまで教えを受ける「生徒」として学校に身を置いていました。でもこれからは、自分を教え、育てるのは自分。だから「生徒以外の誰かになりきって」、学校での日常を見ていかなければいけないと考えたようです。新たな視点の必要性に気づいたのですね。
当初、私が構想していたのは、教員採用・管理に当たる管理職対象の研修でした。大学で授業を持つうちに、学生たちがもっと早い段階、小中学校や高校で、その学ぶ心に火をつける機会があったらよかったのに、という思いが日に日に募っていたのです。それぞれの個性に合わせた、伸ばし方があったはずなのにと。それは、新聞記者として10年以上教育問題を取材していた経験でも考えていたことです。教職課程はガチガチに作り込まれ、文科省も本気で変えようとしているようには見えませんでした。
私の企画に対して、半世紀以上も現場にいたイデちゃんの判定は「ムリ」。そもそも「対象」の設定からしてなっていなかったようです。「教員を採用・管理する管理職」といっても地教委の人事部、管理主事、教職員課、人事課、指導課、試験室…と多岐にわたる。地域ごとに求める人材像が異なり、しかも肝心の学校現場には採用・任用の権限がない。つまり、労多くして得るところはない、という訳です。企画書に嬉々として(?)赤を入れるイデちゃんと対話を重ねて出てきたのが、今回の「考える先生」育成プロジェクトでした。
初回リフレクションシートはこう結ばれていました。
「来週から本格的に始まる。よいスタートダッシュを切りたい」
学生の心に火がついたようです。(マツミナ)