idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

笑顔と奇妙なひっかかり

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7チームのオリジナル新聞(マツミナ)


 いまの学生にとって、新聞を読むことはかなりハードルの高い課題です。そこで、今学期は「まわしよみ新聞」から始めました。新聞を使ったワークショップです。気になった記事を切り抜いて紹介し、1枚の台紙に貼り合わせ、新しい新聞をつくります。新聞を気軽に楽しめ、共通の話題ができるから話も弾む。大阪市民がコミュニケーションツールとして開発したのが始まりだと聞いています。授業用に、代表者が紙面について1分間で説明する、というアレンジを加えました。

 事前に、ハサミとのり、クレヨン、サインペンを持参するよう伝えていました。そんな持ち物を大学の授業で用意するように言われたことがない、と学生たちは不審がっていました。4人が1組となり7チームがそれぞれ車座で、怪訝な表情で始まりました。

 

 始まって5分もたたないうちに、教室は笑い声で満たされました。まずお互いの関心の共通点に気づきます。当日朝刊1面の「来春の採用 2極化」、経済面に掲載されていた「ネット就活 学生不安」は全チームで切り抜いていました。1年生が多いにもかかわらず。

 それ以上に学生たちに強い印象を残したのは、自分と他人の考えが違うことです。リフレクションシートを見ていると、「違うことに驚いた」記述が目立ちました。

 「メンバーそれぞれが異なる対象に関心を持ち、異なる新聞の読み方をしていることに気づいた」「他人の考えを聞くと、自分の偏りにも気づけて面白かった」

 異なる視点、考え方の存在に気づいたことで、行動を変える必要も実感したようです。

 「自分の主張だけをして満足するのではなく、他の人の意見を知る、知ろうとするということの大切さを感じました」

 

 学生たちの笑顔と同時に、奇妙なひっかかりも残りました。

 多様な人の存在がわかり、その中に身を置くことの面白さも実感したにもかかわらず、なぜか「枠」を求めてくるのです。全てのチームがそれぞれ質問してきました。

 

 「台紙からはみ出てはいけないんですよね」

 ――そんなルールはないよ。

 「どっちがいいんですか」

 ――自分たちで考えてごらん。

 

 そのやりとりを、一人の学生はこう表現していました。

 「正解がないはずのことも、正解に近づけようと無意識に考えてしまい、自分の意見を出すことができないのかもしれない」

 ささいな一コマでしたが、学生たちの歩いてきた道を思い起こさせるには十分でした。(マツミナ)