大学の決断
物事は多面体です。人によって見え方やその価値の判断も異なることは珍しくないでしょう。今日、こんな場面に出くわしました。
あるJRの駅で電車を降りると、ホームを挟んだ向かいの電車から白杖をついた女の人が出てきました。おぼつかない足取りです。初めて降りた駅なのでしょうか。慎重に杖をつきながら、点字ブロックを探し当て、手すりを伝って階段を下りていきます。
ふと見ると、その女性を見ているスーツ姿の男性が4人。声をかけていいのかどうか、でももし転びそうになったらすぐに支えてあげられる距離に。私もその距離にいました。
階段を下りて踊り場を歩き、次はエスカレーターに向かいます。点字ブロックが途切れているところで、見守っていた男性の一人がすかさず近寄り、すっと女性の腕をつかみました。女性はかなり驚いた様子でした。
体の一部に触れるどころか、声をかけられても驚いてしまう、と目の不自由な方に聞いたことがありました。おそらく見守る男性陣もその程度のことは認識していたのでしょう。でもその思いを捨てさせるほど、男性は女性を心配したのでしょうね。この女性にとって、私たちそれぞれの対応はどうだったのでしょうか。
緊急事態宣言に対する大学の対応にも、同じ疑問を抱いています。
ある大学は緊急事態宣言発令前から掲載していた総長コメントを26日も掲載していました。そこでは「対面を継続する」と明言しています。対面を継続できるどんな感染防止策が施されているのか、その宣言からは読み取れません。とにかく学生を安心させたかったのでしょうか。
「オンライン中心」で対面授業も行うと決めた大学があれば、「オンライン」のみの大学もあります。この場合の「オンライン」はZoomのような同時双方向型だったり、録画した動画や音声を配信する「オンデマンド」だったり、とそれぞれ異なるようです。
一方、いまだに対応を決めかねている大学もあります。学内で議論となっているのでしょうか。公式サイトからはわかりません。
いろんな学生がいて、授業をする教員の側も多様です。みんなそれぞれの事情を抱えています。多様な人たちが集まるキャンパスにおいて、どんな対応が最もよいのかは見解が分かれるでしょう。
少なくとも、いきなり「決定」として出すのではなく、どのような議論があったのか、なぜこう判断したのか伝えてもらえれば受け止め方も変わってくるのかもしれません。(マツミナ)