idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

土に帰る手続き

 

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尾形光琳 燕子花図屏風」ではありませんよ(イデちゃん)

 長いご無沙汰でした。書き繋いでいただいたミナさんに感謝です。ありがとうございました。

 先日、96歳の天寿を全うした母を送りました。葬儀とそれに関連する手続きを通し、私たちは様々な公的・私的な仕組みに支えられて生活していることを改めて認識しました。「当然のことでしょ。いい歳をして知らなかったの」と笑われるかもしれませんが、多くは意識しないままに過ごしていたことばかりで、一つ一つが見えないところで芋づるのように繋がっていることに感心したのです。

 

 いうまでもありませんが、私たちはこの世に生を受け、役所(行政機関)に出生届を提出することによって「人格を持った個人」として登録されます。戸籍が作られ住民票に記載された瞬間から様々な権利と義務が発生します。

学齢に達すれば小学校に入学し、18歳になれば選挙権が付与されるなど、年齢が増すとともに関係する法律等が増え、権利や義務の範囲も拡大されていきます。個別の法律や条例・規則等を常に意識して生活しているわけではありませんが、必要な時、何か起こった時にそれらが目の前に現れ、向き合うことになります。

 

 「人格を持った個人」の一生は死亡届によって戸籍が抹消され、終わりを迎えることになります。ところが、本人がいなくなっても、それまで機能していた権利や義務が全て自動消滅するわけではありません。身分を公的に証明する届けの消除や、資格・権利等を返納する手続きをしなくてはなりません。もちろん、故人が自分でできるわけがありませんから、然るべき資格を持った人(配偶者とか子供とか)がすることになります。

 

 印鑑登録、住民基本台帳カードのような身分を証明するものや、国民健康保険被保険者証、後期高齢者医療保険被保険者証、介護保険被保険者証等の返納、また、国民年金共済年金などの受給停止、土地家屋相続人代表者届や上下水道使用権名義変更、各種公共料金支払い口座の凍結等、多種多様です。

公的な権利・義務関係だけではありません。この他にもテレビ、新聞や電話の解約、様々な会員登録の解消など、面倒な私的な契約もあります。これから一つ一つ洗い出して整理・解約をしていく必要があります。

 

 私たちの日常は社会の隅々にまで張り巡らされた様々な制度や契約・手続きの上に成り立っているわけですが、文字や記号に変換することが難しい「情」や「心」によっても支えられています。公と私、形のあるものとないもの、見えるものと見えないものなどが複雑に絡まり合う中で、私たちは生きているのだということを今更ではありますが、改めて我が事と実感したのです。

 

 「私たちは永遠に生き続けることはできない。『朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり』と教えにあるように、およそ人の一生は露の如く儚いものである。残された人たちは自分の人生をしっかり生きなさい」と諭す導師の説教をしみじみと受け止め、長い生涯を終え土に帰る故人の冥福を祈りました。(イデちゃん)