idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

学生も企業人も「答え」に飛びつく

f:id:Question-lab:20210525210329j:plain

本日はコンビニスイーツ(マツミナ)

 中間発表に向け、「質問力を磨く(ClassQ)」の学生たちが必死に「質問」しています。今日も月島食品工業のSさんに向けてパンチを繰り出し、答えを引き出そうとしていました。

 

学生 『ISO14001』と『RSPO』の認定の取得や加盟に当たり、具体的に行なった取り組みや、その後に行っている取り組みがありますか。

Sさん これは、まるっと相手にお任せな質問ですね。認証手続きや運用について調べてあれば、この質問は出てこないでしょう。準備してから再質問をお願いします。

 

学生 冷凍食品やレトルト食品を扱う会社との契約本数の増加や売り上げの増加はありましたか?

Sさん 増加を問うなら、比較対象物の定義と比較の物差しが必要です(時期、数量、金額などなど)。この質問だけでは、回答不能です。

 

 なんでも相手が答えてくれる、という姿勢では、質問を武器にした学びの深まりは期待できません。まずは自分で考えなさいよ、まったくもう。

 

 「質問力を磨く」は企業人にも開講しています。上智大学のプロフェッショナル・スタディーズというプログラムの一コマです。この春も14人の企業人を迎えて開講しました。

 受講者は30~50歳代。たくさんの仕事を抱えている方々が、職場から送り出されて学びにきます。中には「質問力」のために大阪や金沢から来ている方もいます。

 こちらの皆さんも共通の悩みは「問い続けるのが難しい」。ビジネスの世界では効率が求められがちだからでしょうか。手っ取り早く「答え」らしきものを求め、飛びつく傾向が出てしまうというのです。

 

 本日の記事は読売新聞1面の「精子バンク有償提供 来月開始『出自知る権利』課題」(2021年5月25日付朝刊)。民間の精子バンクが、有償で精子を提供する取り組みが6月から始まるという内容でした。

 初めは、参加者自身の視点で質問をつくりました。そうして出てくるのは「なぜここまでして子どもをほしがるのか」「こういう制度を利用するのはどんな人か」…。いずれも第三者的、他人事として受け止める質問が出てきました。次は「精子提供で生まれた子ども(20歳代、男性)」になりきって同じ記事を読んでもらいました。質問がガラリと変わります。「父は自分をどう見ているか」「自分は本当は何者なのか」。自分事として考える質問になるのです。参加者自身も、その変化に驚いていました。

 

 問題はここからです。参加者から質問が出ました。

 「自分以外の視点を持つことは大事です。同時に自分自身の視点も重要です。このバランス、配分はどのぐらいがベストなのですか」

 

 答えを求め、飛びつこうとするのは、企業人も変わらないのです。(マツミナ)