idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

何かが動き出す気配がする

 

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夜来風雨声 花落知多少

 「高校までの学びのように明確な答えがないし、解決する道筋すら見えないもの」を相手に「学生たちの中で何かが動き出すようです」

何がどのように動き出すのかまだよく見えては来ないけれど、その手応えを感じ始めた時の「ワクワク感」はたまりませんね。「私がもし逃げ出しそうになっていたら一声かけて」と助けを求める学生を唆したり、けしかけたり?しながら寄り添い、成長を支えていく仕事っていいですねえ。教師冥利に尽きるでしょ。

 

 T君も動き始めましたよ。彼が整理した6月3日のリフレクションシートをもとに追いかけてみることにします。

 「今日の『考える先生プロジェクト』では、先週の『表面的な物だけを見て半ば満足していた』という反省から、生徒の内側を知ることを目標として設定した」。そして、生徒のことを知るために「まずは関係構築から始めることにした」と書いています。

 T君はその日参観する学級の朝学活で、敢えて自己紹介をしませんでした。それは生徒が「何も情報のない人(もの)にどのように接してくるか」見たかったことと、「生徒からすれば異質な者である私が、どのように生徒と関係を作るのがいいのか検証したかった」と考えたからです。

 自己紹介をして「よろしくお願いします」といえば形式的な関係は作れるけれど、それだけでは相手が意志を持って自分に関わろうとしているのか否かを確かめることができません。そこで彼は生徒の方から話しかけてくるのを待つことにしたのです。

 

 言語学者金田一京助樺太アイヌ語の調査をしたとき、アイヌの子供たちから樺太アイヌ語を教わったというエピソードを書いた「心の小径」という本を読んだことがあります。

 大人たちに話しかけても全く言葉が通じなくて困っていた春彦の周りに子供たちが集まって来た。子供たちは初めて見る得体の知れない来訪者に興味津々で、彼の一挙手一投足を珍しがった。そのうちに自分が何かする度に子供たちが発する言葉は、どうやら「何?」「何をしているの?」という意味かも知れないと考え、自分の顔を指して同じようにいうと子供たちがアイヌ語で答えた。やはりそうだった。それから彼は子供たちに次々と「何」を連発して言葉を集めることができた、という話です。

 

 T君の取った方法と似ていませんか。

「朝の学活が終わった途端に私の方へ10人程の生徒が寄って来た」「関係を構築するためには『話す』ということは必須の条件だ」。そして「相手と関係ができると見えなかったものがみえてくる」ことに気づいたと書いています。

  

 試行錯誤を繰り返しながら対象に迫り、「自分で自分の学びを組み立て」ようと頑張っているT君を見て、私もまた「何かが動き出す」手応えを感じ始めています。(イデちゃん)