無法地帯を行くのなら
8月3日夜、ブログを書き終えて散歩に出たイデちゃんから、驚きのメールが送られてきました。タイトルをつけるとしたら「無法地帯ルポ」。
〈小金井公園は夜にもかかわらず子連れの家族、若者が溢れ異様な雰囲気です。花火を上げ、大声で騒ぎ、テーブルにはビール、酒。驚きました。オリンピック村並みの無法地帯化ですね。いよいよ世紀末だ〉
無法地帯が急速に広がっています。一夜明けて4日、東京の新規コロナ感染者数は4,000人を超えました。同じ日、政府は「重症患者以外は、自宅療養が基本」という方針を決めました。新型コロナ感染症対策分科会にも相談せず、この判断をしたそうです。何のために専門家集団を抱えているのやら。
こんな無法地帯で生きていくには、考える習慣が大切です。だからこそ、学生たち若い世代には考える力をつけるための読書を勧めています。
本日、「質問力を磨く(Class Q)」の学生と面談をしました。この学生には今学期、単位を出しませんでした。課題を出さなかったからです。チームワークや議論から逃げないだけのガッツはあるけれど、何かを続けること、特に考え続けることが苦手なようです。
学生に勧めた一冊は、「パンデミックの倫理学」(広瀬巌著、勁草書房刊)。著者は、カナダ・マギル大学哲学部の教授です。世界保健機構(WHO)の依頼を受け、パンデミック対策の倫理指針を考える部会に参加していました。
倫理指針では、ワクチンや人工呼吸器を、誰に優先するべきなのかを盛り込むそうです。たとえば、こんな場合は?
人工呼吸器を必要とする2人の重篤な患者が搬送されてきました。人工呼吸器は1台しかありません。2人の間には、ある一点を除いて差異はありません。
その差異が例えば年齢だったらどうでしょう。1人が20歳で、もう1人が90歳だったら?1人が医者で、もう1人は医者でなかったらどうでしょう。
絶対の正解はないかもしれない。その中でよりよい答えを考え続ける。それが哲学者に課せられた使命だったようです。
この学生は、まもなく米国に留学し、卒業後は起業したいと語っていました。考え続ける習慣はきっと将来に役立つはずです。「面白そう。読んでみます」と学生は書名をメモしていました。来年、帰国したらClassQに戻りますから、とも言い添えて。
無法地帯はうんざりです。でも世紀末にしちゃいけませんよね、イデちゃん。(マツミナ)