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ないものを探す

 

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本を読んだら甘いもの(マツミナ)

 コロナ感染者数拡大よりもオリンピックの勝敗やドラマにはしゃぐ報道にうんざりし、新聞を開く気もしません。今が学期中でなくて、本当によかった。

 こんな時は本と辞書に限ります。本と辞書をつなぐ一冊に出会いました。

 「比べて愉しい国語辞書 ディープな読み方」(河出書房新社)。著者は「辞書蒐集・研究家 ながさわ」さんです。

 冒頭から辞書への愛が炸裂しています。ながさわさん宅のクローゼットには辞書1,000冊が収納されています。その重みでクローゼットの引き戸の開閉がうまくいかない、と書き出しています。さらに曰く、「みなさんが辞書千冊をしまう際には、クローゼットは避けることをおすすめします」。いやいや、辞書編集者や言語の研究者ならともかく、1,000冊も辞書を買う人がそんなにいるのかどうか。

 

 目次にも、辞書への深くて熱い「愛」があふれています。

 

 1章 辞書は「比べてなんぼ」である

 2章 徹底検証! 目的別「ベストな一冊」はこれ

 3章 「得意分野」を知れば辞書はこんなに愉しめる!

 4章 辞書に「なぜか載らないことば」のミステリー

 5章 もっと辞書が引きたくなる「改訂版」深掘りレビュー

 

 嬉しくなったのは、4章。辞書にない言葉を見つける愉しさを書いていたことです。ながさわさんの記述によると、その道の先達は著名な辞書編纂者、見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)。国語辞典に「司会」という単語が載っていないと指摘したある国語学者の指摘を新聞紙上で発見したことを機に、本や新聞といった活字媒体はもちろん、街の看板までをチェックし、用例採集に励んだそうです。それをせっせと辞書に書き込んでいたのですね。すてきすぎる。ないものを見つける。Critical thinking(批判的思考力)そのものです。

 

 学生たちにはいつも「辞書をひきなさい」と勧めています。わからない言葉に出会ったら、即、辞書を開く。それも「紙の辞書」をと伝えてきました。言葉の海は広くて、しかも深い。「伝わる言葉」をたくさん持ってほしい。でもこれからは、勧め方を変えましょう。「わからない言葉に出会ったら」ではなく、「いつも辞書と遊んでごらんよ」と。たくさん集めるのなら、クローゼットはダメよ、とも言い添えて。(マツミナ)