リアルの力は強い
帝京・上智の両大学で開いている授業「質問力を磨く(Class Q)」で初めて、「論文検証インターンシップ」を用意しました。自分が論文で展開した主張を、現場体験を通して検証する取り組みです。授業に協力してくださったITや建設、食品などの8社すべてが受け入れを快諾してくれました。
春学期の最終課題は「営業職の研究」。8社のうち1社を取材し、営業職とは何をする職種なのか、どんな人がどのように働いているのか、どんな課題があるかなどを考え、1200字以内の論文にまとめました。その内容を自らの目でしっかりと見直してくるのです。
授業はとっくに終わっていますが、10人近くが参加しました。論文を片手に企業に出かけ、数日がかりでインターンシップをしてきました。まだインターンシップ中の学生もいます。
昨日、そのうちの3人が書き直した論文を提出しに来ました。面談ではいつも通り論文を音読してもらい、続けてこの質問を投げかけます。
「で、この論文で結局、あなたは何を言いたいの?」
前期の最終面談では、しどろもどろになっていました。困った挙句、「何が書きたかったんだと思いますか」と質問返しをしてきた学生もいました。私にはわからなかったから尋ねているの、というと「自分でもわかりません」。
昨日の面談は違いました。3人とも自信を持って、自分の主張を口にしていました。相変わらず誤字脱字はあるし、根拠もなく言い切っている部分もありますが、どの論文にも「厚み」が出ているのです。多くの人たちと語り、ともに仕事をさせてもらったようです。これがリアルの力なんだ、と実感しました。どれほど新聞や本を読ませても、伝わらない現場の空気を吸った者だけが書ける内容を含んでいました。
結局、3人はまた書き直すことになりました。やりとりしているうちに見逃していることがたくさんあったことに自ら気づいたためです。3人は再び企業に出かけるそうです。
さあ、次はどんな論文を見せてくれるのでしょうか。秋学期の授業も楽しみです。(マツミナ)