idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

屋根のなくなった学校

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富士山 台風の翌日朝 雲なし(イデちゃん)

 

  9月30日、10月1日の2日間は台風情報から目が離せませんでした。

 「大型で強い台風第16号は……」という前置きに続いてテレビ画面に映し出される伊豆諸島の状況を見ていると、知っている場所が次々と出てきて様子が気になります。八丈島の藍ケ江の様子が映りました。10数mを超える高さの波が防波堤を乗り越えています。以前勤めていた小学校の前の道をまっすぐ下りて行った断崖の下にある小さな漁港です。海が穏やかな時は名の通り透き通るような藍色をした入江で、夏は突堤の内側で泳ぐことができます。

 

 沖に面した高い防波堤を高波が猛々しく越えて来る様子を見ながら、30数年前の出来事を思い出しました。

 1991年9月のことです。大型の台風が接近し八丈島を直撃するという予報で、その日は学校を臨時休校とし、校舎の保全に備えて男性の教職員を招集していました。台風が近づき強い風が校庭の周辺に植えられたビロウ椰子やカナリー椰子を揺らします。背の高いカナリー椰子は頭に近い辺りが大きく曲げられて、今にも折れんばかりでした。

晴れていれば職員室の窓から太平洋が見渡せます。水平線に入道雲が連なり、海と空の境目を大きな貨物船がゆっくりと進んでいくのが見えます。その日は海面まで垂れ下がった台風の雲が強い雨風を持ち込んで薄暗く、外の様子もよくわからないほどでした。

 昼近くになって朝から続いていた雨風が止み、ヤシの木の揺れも止まって静かになりました。外が明るくなり雲間に空が見えました。職員の一人が「台風の眼に入った」と教えてくれました。

 「吹き返しがくると危ないな」

 島に住んで長い彼が心配そうに言いました。「吹き返し」というのは台風の眼から出る時、風向きが今までと逆になることで、急に強い風が吹くそうです。

 心配したことが起こりました。突然、猛烈な突風が校庭の小さな石砂を巻き上げて職員室の窓を襲いました。窓ガラスは一枚残らず割れて室内に飛び散り、風は天井を打ち破ってトタン屋根をめくりあげて吹き抜けていきました。一瞬の出来事でした。職員室の隣の図書室と5・6年生の教室を見に行くと、どの部屋の窓ガラスも吹き飛ばされていました。

 外に出て校舎を見上げると、青いペンキを塗ったトタン屋根は無惨にめくり上げられ、一部はちぎれて吹き飛ばされて屋根がなくなっていました。

 

 一夜明けた今朝は台風一過の秋晴れ。八丈島で製パン業を営む友人に安否尋ねると「徹夜でパン生地を仕込み、手伝いの人を何人も頼んで、朝の1時からパンを焼いている」と返信がありました。台風のために東京からの定期船が何日も接岸できず、島に数軒しかない食品スーパーの陳列棚が空っぽになってしまったとのことです。開店までに間に合わせようと夜を徹してパンを焼く友人に、遠くからエールを送りました。(イデちゃん)