idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

「責任感」が学生を考えさせる

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栗の美味しい季節になりました(マツミナ)

 

 昨日は学生主催のマラソンQに参加してきました。「自分以外の誰かになりきって」新聞を読み、問いを立てるというふだんの授業の6時間版です。帝京大学の図書館も使って、たくさんの本を資料として活用しながら、延々と思考を深めていきます。

 ふだんは授業者。昨日は一参加者として学生と一緒にチームに入れてもらいました。その中で何が刺激となって学生は考えるようになるのか、知りたかったのです。

 

 その結果、考えさせる一つに「責任感」があることがわかりました。司会となった学生を見て気づきました。

 司会に課されるのは、6時間の構成、記事や担当者の配置の決定です。担当者の配置は、手伝ってくれる仲間を探して頼むというひと手間も発生します。司会の学生は「人とかかわるのが苦手」といつもこぼしています。それが、どうやら頭を下げて手伝ってもらったようです。見かねて周りが手を出したのかもしれませんが。

 記事選びからも、司会の学生が考えたことがわかりました。

 選んだ記事は「新車国内販売32%減 9月 部品不足で減産」(2021年10月2日付読売新聞朝刊)。経済面に掲載された2段扱い、小さな記事です。新車の販売台数が前年同月比32%減、31万8371台、3か月連続のマイナス。1968年に次いで、過去2番目に少ない販売台数でした。東南アジアで新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウン(都市封鎖)が行われ、工場が稼働せず部品不足が深刻化。各メーカーが大幅に減産せざるを得なかったことが販売台数の少なさに表れたと書かれていました。これを経済産業省官僚になりきって考えるという設定にしてきました。

 

 司会の学生は、記事を決めるため朝5時に起きて、新聞を隅々まで読んで思考をめぐらせたそうです。日本の基幹産業の自動車の減産は何を意味しているのか、外国に工場を置くことの功罪、そうなると台湾頼りの半導体も問題だろうか、中国にも工場を置いている日本企業が多いから日中関係も考えなければ…。

 

 今回は約20人とこぢんまりとした規模でした。そのため時間にもゆとりのある設計になり、参加者も「楽しかった」「また参加したい」と満足感を口にしていました。

 終了後に学生からメールが来ました。

 「(他の学生にも)たくさん迷惑をかけました。でも司会者をしたからこそ見える景色や学びがありとても勉強になりました。朝早く起きて新聞記事を決めることや、立場を考える難しさを実感しました。でも楽しかったです。家に帰り、なにか喪失感がすごいです」

 

 仲間に迷惑をかけたことを自覚できた、喪失感を抱けるほどに熱中したということです。

 司会に指名したのは私ですから、追い込まれたに過ぎない、とも言えます。でも一歩ずつ。自分で手を挙げられるようになる日がくると信じています。(マツミナ)