idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

テーマを見つけられないのは、学生の問題か

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塩麹に2日漬け込むだけで別格の味わい。カボスを添えて(マツミナ)

 

   ゼミの教授に「卒論のテーマをください」と求める学生は、特殊な事例ではないと見ています。新聞記者時代に取材した大学で似たような話をしょっちゅう聞いていたからです。

 「自分の知識と経験をフルに使い、オリジナルなテーマを見つけ出す力が衰えている」――。嘆く大学の先生たちに同情する一方で、内心では、そうした力が衰えているのは学生だけだろうかと首をかしげていました。国公私立、どの大学を取材していても既視感のある取り組みばかりが目についていたのです。

 

 初年次教育はその一例です。新入生を対象にした教育プログラムで、大学での学び方を手取り足取り教えていました。高校と大学では学び方が違うことを伝えることが眼目で、もとは1980年~90年代にアメリカの大学で広がっていたプログラムが輸入されたと聞いています。

 初めは、現状に対する問題意識を抱えた大学人たちの意欲ある取り組みでした。ノートの取り方、レポートの書き方、時間割の組み方…。どれも目の前の学生たちが困っていることを把握して、そこから対策として練り上げた内容でした。授業を取材するたびに、そこに込められた熱い思いに感動したことを覚えています。

 いつからかそれが「横並び」で広がっていました。しかも判で押したような内容で、中でも「プレゼンテーションやディスカッション」が大人気。2018年度には631大学、全体の85%を占めるほどに広がっていました(文部科学省調査「大学における教育内容等の改革状況について」2018年度より)。

 横並びのきっかけとなったのは、中央教育審議会の答申でしょう。2012年にこんな答申を出しています。

 「従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」(新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ)。この答申を受け、文科省がディスカッションやプレゼンテーションを盛り込んだ初年次教育の有無を尋ねているのですから、広がったのは当然なのかもしれません。

 

 そうした大学で学ぶ学生が独自のテーマを見つけるのは、そう簡単ではないでしょう。でも、希望はあります。「質問力を磨く」や「考える先生」に参加している学生がいるのですから。学生は成長したがっているのです。(マツミナ)