idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

いい加減に生きる?

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自分の思考を振り返り、考え込む学生。こういう姿を見るとほっとする(マツミナ)

 

 早く寝なきゃと思っているにもかかわらず、つい映画を見てしまうことがあります。昨夜は「すばらしき世界」を見てしまいました。

 人を殺した男(役所広司)が、13年の刑期を終えて出所するところから物語は始まります。養護施設で育ち、14歳で少年院に入って以来、大半を刑務所で過ごしてきたけれど、今度こそはまっとうに生きていこうと努力を始めます。そうした姿に、身元引受人だけでなく、近所のスーパー経営者らも手を差し伸べるようになります。とはいえ、いったん脱落した人に社会は寛容ではありません。これでもか、というぐらい、男は打ちのめされていきます。

 苦労の末、高齢者の介護施設にパートとして雇われることになりました。支援する人々が開いたささやかな祝いの席で、こんな助言がされていました。

 「(あなたは)人間がまっすぐすぎる」

 「私たちってもっといい加減に生きてんの」

 「(理不尽が)向かってきても、耳を塞ぐ」

 「切り捨てていかなくてはいけない」…。

 目の前で困っている人を放っておけない、そのために厄介事を背負いこむことになってしまった男に対して、身元引受人たちは「もっといい加減になれ」と諭すのです。このいい加減は「良い加減」ではないでしょう。異質な者を排除して、ようやく社会は危うい均衡を保っている。そこで生きていくために「まっすぐすぎ」では自分の身を守れないのだ、と伝えようとしていたのです。

 

 明日は衆議院議員選挙です。読売新聞朝刊(10月30日付)には、有権者としての心構えを書いたコラムが掲載されていました。末尾にこう書かれていました。「政治の世界ではベストの選択など望んでも無理です。ベターも簡単ではありません。『よりまし』『より悪くない』ぐらいの醒めた目で見た方がいいと思うのです」。コラムのタイトルで「公約に厳しい目を」と大上段に構えていただけに、拍子抜けしました。

 

 いい加減に生きていないと均衡を守れない社会、「よりまし」程度で投票するよう推奨される選挙…。

 「すばらしき世界」では、たびたび空が映し出されていました。すばらしき世界はいつかきっと実現できる、そのために私たちはもっと考えなくてはいけない。そんなふうに受け止めました。明日、必ず選挙に行きます。(マツミナ)