ツルツルじゃない面接
「先生、内定出ました!」
ゼミ生からの一言に、やったやった、と手を取り合って喜びました。長く苦しい日々でした。
ゼミ生は春先には就職活動を始めていました。受けても受けても、結果に結びつかない日が続くうち、どんどん俯きがちになり、「どうせダメだし」と就職活動をやめてしまいました。
もう誰も自分を必要としない。自分の存在を全否定されたような気持ちになっていました。どこがダメなのか、わからないだけに辛い。自分の学生時代を重ね合わせ、慰める言葉にも詰まっていました。
転機が訪れたのは、先月です。その日も私の前で、泣いていました。泣いたらスッキリしたのか、就職活動で自分を売り込む作戦を変えようと思い立ったようです。
〈自分が学生時代に1番力を入れたのは、「質問力を磨く(Class Q)」だ。これをちゃんと伝えよう〉。
文章を書けるようになりたいから毎日、社説を書き写していること。2年次のClassQで「憲法9条問題」の記事に出会って以来、防衛問題に関心を持ち、毎日、関連記事をスクラップしていること。新聞の隅々まで目を走らせて、スクラップをすることが楽しくて仕方がないこと。スクラップが7冊目まできていること…。入学直後からClassQで学び続けて3年あまり、そこで注いできた熱量のありったけをエントリーシートに書き込んだそうです。
すると、企業が食いついてきたのだといいます。
「社説を毎日書き写しているのですか? 変わった授業ですね」
これに対してゼミ生は、ClassQとはどんなクラスか、なぜ書き写す必要があるのか、書き写すことでどんな力がついて来たかを説明します。
「スクラップが好き? 面白いですね」
自分の関心のある記事を見つけたときの興奮を、熱っぽく語ります。
これまでも、Class Qについて説明しようとしましたが、うまく伝わらないため、当たり障りのない部活の話などをしていたそうです。当たり障りがないから、面接担当者に引っかからず、結果につながらない。つまりツルツル面接をしていたのです。
大事なのは熱量。伝わらないかも、ではなくて伝える努力なのでしょう。「ツルツル面接」から脱するヒントはそこにあるかもしれません。(マツミナ)