idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

主体的・対話的で深い学び

f:id:Question-lab:20210331194255j:plain

生クリームはボウルごと持ってきてほしい(マツミナ)


   
2022年度から高校生が使う教科書の検定結果が公表されました。「主体的・対話的で深い学び」の理念が盛り込まれているそうです。自ら課題を見つけ、先生、あるいは生徒同士で意見を交え、考えを深めていく授業――そこまで想像しながら、ふと、学生とのやりとりを思い出しました。

 

 ある日の授業後、1年生の男子学生が「質問があるんです、マジな」と寄ってきました。何だろ、と促すと、続いて出てきた言葉は「先生はなぜ否定しないんですか」。

   その日の授業は、途中からずっと学生たちとのキャッチボールでした。「質問力を磨く(Class Q)」では、質問をたくさん出すためにコンセプトマップを広げることを勧めています。文章を単語に分解し、分類し、並べ替えていくことで、行間に隠れている言葉が浮上してくることがあるからです。これに対して、学生から「Cマップは何のために書くのか」「ゴールは質問作りだから、質問を作ってからマップを書く方が手っ取り早いのではないか」「どうしたら効率よくマップが書けるか」…。

 「余計な手間」を嫌い、一刻も早く「答え」にたどり着きたい学生は必ずいます。ゴールから逆算した方が早いという意見は、その発想の延長ですから、さもありなんです。そうした学生たちの問いに対して私からは、その質問が本当に問いたいことなのだろうか、「仮説」としておいた方が発想が広がり見落としていた行間に気づかないだろうか、そう返しました。納得していない顔を見つけては、考えを聞き続けていました。

   「マジな」質問をしてきた学生は、その様子を黙って見ていました。彼の観察によると、いつの間にか、教室内の学生の目がキラキラしていったそうです。誰も私から目をそらさず、次は自分に話しかけてほしい、意見をぶつけ合いたい、わくわく…。

 「俺は不思議だったんすよ、あの空気の変化が」と彼は首を傾げていました。「俺はサークルの代表をしているんだけど、意見が違うと(相手を)否定する。みんなそうする。でも、先生はしない」。その理由を知りたかったと言います。

   学生たちは否定されてきたと感じていたようです。先生に、親に、同世代の誰かに。言葉のキャッチボールを通して新しい投げ方を覚える前に、たたきふせる、ねじ伏せるという乱暴な技を身につけてしまったのかもしれません。そして、否定された人は、相手の意見をやはり否定する、その繰り返しだったようです。

 

 新しい教科書でどんな授業になるのか。少なくとも「否定された」で終わらない授業であればいい、と願っています。(マツミナ)