idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

しばらくブログを休みます。

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輪島の海。この時期の日本海とは思えない青さ

 

 読者の皆さま

 

 私たちのイデマツブログにいつもお付き合いくださってありがとうございます。本日は、しばし休載のお知らせです。

 私たちはこのブログで何を伝え、どうしたいのか、もう一度原点に戻って考えます。以下に、私たちのやりとりの一部分をご紹介します。

 

マツミナからイデちゃんへ

 このブログのサブタイトルは「屋根のない学校をつくろう」でした。屋根のない学校とはどういうものなのか、今の学校ではどうしていけないのか。そうしたことを書いていく必要があると思っています。

 身辺雑記もいいけれど、そこから「学び」に続ける工夫も必要ではないでしょうか。例えば「ゴミ」ならば、それを学校でどう教えているか、いないか。道徳とか、環境学習に引っかけてもいいのかもしれません。教師歴半世紀のイデちゃんならではの指摘と考察を読者に届けてほしいです。私は大学の現場から、親となる、あるいは教員となる学生をどう育てているかを中心にお伝えします。

 それぞれの役割を持った私たちの「往復書簡」ブログという形で、そうしたことを積み上げていったらどうかと考えています。お考えをお知らせくださいませ。

 

イデちゃんからマツミナへ

 おはようございます。実は私も同じことを考えていました。

 日常の出来事を身辺雑記のような形で取り上げ、そこから教育の現状を考える視点を見つけ出すことは意味のあることですが、ともすると教訓めいた話や独りよがりな価値の押し付けになることがあって、そう簡単ではありません。

 独りよがりなものにしないためには往復書簡のようなやりとりを繰り返して、論点を整理し、主張を練り上げていくのがいいでしようね。

 ブログを始めて1年経ったこの時期に、マンネリや独善を回避するためにも、しばしお休みして次の方向を考えてみることにしましょう。

 

 

批判的思考力が芽吹く

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手間のかかったケーキは、見ているだけでも楽しい


 「先日の社説に疑問があります」 

 質問力を磨く(Class Q)の授業中、学生からこんな発言が上がりました。その日のキーワードは脱炭素、持続可能な社会。それに触発されたようです。

 

 問題視された社説は、「仏の原発回帰 脱炭素が後押しした政策転換」(2021年11月22日付読売新聞)。フランスは発電量の7割を原発に頼っていますが、2007年以降新設されていません。それが温暖化による異常気象への不安や、ガス・電気料金の上昇への不満もあって、「国民の間で原発を肯定的にとらえる見方が強まっていることがある」と説明したうえで、最後に日本のこれからについて言及します。

 「欧州のような国境を越えた電力網がない日本は、状況はさらに厳しい。フランスの動きを参考に、原発の再稼働はもとより、新設・増設も積極的に検討すべきだ」

 

 学生が疑問を抱いたのはここです。最後にいきなり日本の原発政策に言及するのは唐突すぎると指摘します。「結論ありきだと思います」と学生が話すと、別の学生も「私もそう思う。積極的に検討すべき日本の根拠はどこにあるんだろう」と同意します。

 

 その日のリフレクションシートの中には、別の日の社説についての記述もありました。大阪で3歳児が母親の交際相手に熱湯をかけられて死亡した事件です。

 

 「男の暴力を察知していた母親に、我が子を守るすべはなかったのだろうか。…略…大阪府には、児童相談所に寄せられた虐待情報を全て警察と共有する制度がある。だが、今回は情報が市と児相にとどまり、警察に届かなかった。危機感が共有されていれば、男児の保護や警察の介入につながった可能性がある」。(2021年9月28日読売新聞社説「大阪3歳虐待死 目を覆いたくなる痛ましさだ」)

 

 この社説について、学生は疑問を投げかけていました。

 「なぜ母に責任を求めるのか。なぜ家庭内と外という線引きをするのか。制度の話をしているのに、なぜ『危機感が共有されていれば』という感情の問題にすり替えたのか」

 

 学生たちの発言や記述に、心の中でガッツポーズを決めていました。待っていたのです、こういう反応を。

 ClassQの開講当初、新聞を開いたことのある学生はほとんどいませんでした。もちろん社説の存在すら知りません。

 そうした学生に社説の書き写しを課すのです。量は、授業週数の2倍、15週の授業なら30回。まず音読し、自分の声と耳で意味を大づかみするよう勧めています。次に鉛筆を動かして書き写せば、一言一句を追うことができます。その過程で、違和感が生じるはずと期待していました。

 このことを教えてくれたのは、尊敬するA先生です。先行研究として取り上げる誰かの論文は、必ず書き写していたと話していました。相手の論理の問題点が見えてくると話していたのです。

 

 新聞社の社説の問題点が見えてくる、これが批判的思考力の萌芽かもしれません。これからの成長が楽しみです。(マツミナ)

「WEBでご確認ください」と言われても

 

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まっかだな、まっかだな、紅葉の葉っぱもまっかだな

 

  昨日、新しいPCが届きました。厚さ10cmにも満たない薄い長方形の箱に収められています。早速本体を取り出したのですが「取り扱い説明書」が見当たりません。緩衝材の間にあるのかなと思って探しましたが見つかりません。例の分厚い「取説」が入っていないのです。それらしきCDもありません。

取説がなくてもセットアップできるかなと不安に思いながら電源を入れてみました。すると初期画面が立ち上がり、Wi-Fiネットワークへの接続を求めてきました。

 

――お使いのルータのセキュリティーコードを入力してください――。

 

    コードを入力するとネットワークに繋がり、あとは要求に従って必要な情報を入力するだけでした。「取説」が入っていない理由がわかりました。でも、もし我が家にWi-Fiが設置されていなかったらどうなったでしょう。初めてPCを買った人はどこかに持っていってセットしてもらうのだろうかと他人事ながら心配になりました。

以前「コンピュータの初期設定いたします。インターネットを使えるように設定します」というチラシが郵便受けに入っていたことを思い出しました。「取説」と首っ引きで初期設定したことを思えば飛躍的に簡便化したとはいえ、誰でも簡単にできるわけではありません。面倒な初期設定やネット接続が「商売」になるのもわかる気がしました。

 

 留守宅に溜まった郵便物を整理していて、電力会社から来た「ご契約に関する重要なお知らせ」を見つけました。ひと月ほど前に届いていたようです。

「検針結果のお知らせ方法のペーパーレス化、請求書・振込用紙の有料化について」というタイトルの冊子が同封されており、「当社は、環境保全への取り組みの一環として、紙の消費量の削減を目的に、2022年4月以降、検針結果のお知らせ方法について、ペーパーレス化することといたしました。2022年4月以降は、WEBによりご確認ください。インターネット環境がない等の理由から、引き続き、検針票のお受け取りをご希望される場合は、お申し込みが必要になります」と書かれていました。

気づかずに放置していたらどうなるのでしょうか。

 「2022年4月分より、一部料金メニューにつきまして、請求書の発行手数料100円/月(税込)をご負担いただきます。有料化にともない、発行停止を希望される場合は、専用ダイアルまでご連絡下ください。振込用紙につきましても、発行手数料220円/(税込)をご負担いただきます」とありました。

 連絡せず放置しておくと請求書の発行手数料100円と振込用紙の発行手数料220円を毎月取られることになるところでした。

 デジタル化が進められ「ペーパーレス社会」が標榜されています。でも「WEBによりご確認ください」といわれても、できない人だってたくさんいるはずです。「WEB確認代行します」なんて商売が繁盛するかも知れません。便利で不便な時代になりました。(イデちゃん)

「WEBでご確認ください」と言われても

 

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まっかだな、まっかだな、紅葉の葉っぱもまっかだな

 

  昨日、新しいPCが届きました。厚さ10cmにも満たない薄い長方形の箱に収められています。早速本体を取り出したのですが「取り扱い説明書」が見当たりません。緩衝材の間にあるのかなと思って探しましたが見つかりません。例の分厚い「取説」が入っていないのです。それらしきCDもありません。

取説がなくてもセットアップできるかなと不安に思いながら電源を入れてみました。すると初期画面が立ち上がり、Wi-Fiネットワークへの接続を求めてきました。

 

――お使いのルータのセキュリティーコードを入力してください――。

 

    コードを入力するとネットワークに繋がり、あとは要求に従って必要な情報を入力するだけでした。「取説」が入っていない理由がわかりました。でも、もし我が家にWi-Fiが設置されていなかったらどうなったでしょう。初めてPCを買った人はどこかに持っていってセットしてもらうのだろうかと他人事ながら心配になりました。

以前「コンピュータの初期設定いたします。インターネットを使えるように設定します」というチラシが郵便受けに入っていたことを思い出しました。「取説」と首っ引きで初期設定したことを思えば飛躍的に簡便化したとはいえ、誰でも簡単にできるわけではありません。面倒な初期設定やネット接続が「商売」になるのもわかる気がしました。

 

 留守宅に溜まった郵便物を整理していて、電力会社から来た「ご契約に関する重要なお知らせ」を見つけました。ひと月ほど前に届いていたようです。

「検針結果のお知らせ方法のペーパーレス化、請求書・振込用紙の有料化について」というタイトルの冊子が同封されており、「当社は、環境保全への取り組みの一環として、紙の消費量の削減を目的に、2022年4月以降、検針結果のお知らせ方法について、ペーパーレス化することといたしました。2022年4月以降は、WEBによりご確認ください。インターネット環境がない等の理由から、引き続き、検針票のお受け取りをご希望される場合は、お申し込みが必要になります」と書かれていました。

気づかずに放置していたらどうなるのでしょうか。

 「2022年4月分より、一部料金メニューにつきまして、請求書の発行手数料100円/月(税込)をご負担いただきます。有料化にともない、発行停止を希望される場合は、専用ダイアルまでご連絡下ください。振込用紙につきましても、発行手数料220円/(税込)をご負担いただきます」とありました。

 連絡せず放置しておくと請求書の発行手数料100円と振込用紙の発行手数料220円を毎月取られることになるところでした。

 デジタル化が進められ「ペーパーレス社会」が標榜されています。でも「WEBによりご確認ください」といわれても、できない人だってたくさんいるはずです。「WEB確認代行します」なんて商売が繁盛するかも知れません。便利で不便な時代になりました。(イデちゃん)

主語がない日本語

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輪島の海(マツミナ)

 

 イデちゃんがゴミと戦っていた間、こちらは学生の「日本語」と格闘していました。上智帝京大学で開講する「質問力を磨く(Class Q)」で、留学生と帰国女子の日本語に驚かされました。

 

 Class Qでは、自分以外の誰かになりきって新聞を読み、そこで抱いた疑問を質問として言語化します。先日は「日本の火力発電所で働く20代の日本人」になりきって、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)関連の記事を読み、そこで浮かび上がった質問を発表してもらいました。難しい課題です。留学生のいるチームはこんな質問を作りました。

 

 自分の発電所の未来を切り開く

 1  異動も考慮に入れてこの会社で働き続けるには

 2  この会社で働いてくれる人を増やすには

 3  新技術の導入をさせるには

 

 内容そのものよりも、主語がどこにも見当たらないことに驚きました。話し言葉をそのまま書いているだけで、しかも語尾をぼかしているので、それぞれの質問の焦点も絞れていません。三つの質問が一つのストーリーとしてつながっていないため、結局何を知りたいのかもわかりません。

 そこで、主語は誰なのか、なぜ主語を省いているのかと質問しました。

 それに対して、留学生はこう答えてきました。

 

 「日本語学校で『日本語を上手にしゃべるには、主語をなくしなさい』と教わりました」

 

 その理由は説明されていない、と補足していました。

 

 帰国女子は、別の観点から主語を省くことを「覚えた」と話していました。帰国して間もないころ、英語の感覚で「私は~と思います」「私は~です」と常に主語を入れて話していたら、「自己主張が強すぎる」と言われてしまったそうです。以来、主語のない文章で話し、書くようになったとふりかえっていました。

 

 主語がなければ「日本語を上手にしゃべることができる」と認定される。さらに「自己主張が強すぎる人」という評価も避けられる。主語がないから文意が不明で、責任も問われない、ということになるのでしょうか。主語がない日本語は、日本のどんな状態を象徴しているのでしょうか。

 「主語を明確にして、発言者として責任を持ちなさい」と言うことが学生たちの未来にとっていいことなのかどうか、頭を抱えています。(マツミナ)

 

ゴミを捨てるのは楽じゃない

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冬の花火(イデちゃん)

 

 先週から田舎の家の片付けを続けています。今朝は不燃物を入れた大きな袋12個を近くの集積所まで運びました。先日物置で見つけた台車を使おうと思いつき、軒下に立て掛けて置いたのを持ってきました。ずっしりと重い袋を2個積み上げて「これは楽チン」と数メートル進んだところで「ガタン」と前輪がはずれました。

 その拍子に不燃物袋が転がり落ちて破れてしまい、中身が道路に散乱しました。楽ができると思ったのも束の間、新しい袋をとりに戻って詰め替える羽目になる始末。物置に放置されていた理由がわかりましたが「後の祭り」でした。

 

 地区のゴミ集積所は狭い道路脇にあり、不燃物の置き場所は白線で仕切られています。不燃物の回収は月に1回だけなので、各家庭に置かれていたものがこの日にまとめて出されます。何回か運んでいるうちにあちこちからゴミが集まってきて、それほど広くない集積場から車道にはみ出すほどになりました。見かねて整理している私のすぐ横に、投げ出すように置いていく人もいたりして、思わず睨みつけてしまいました。

 近くに交差する幹線道路があり、集積所横の道路に信号待ちの車が溜まります。車とゴミ袋の間の僅かな隙間を自転車に乗った中学生や高校生が次々とすり抜けていきます。ハンドルが車に当たったら転んでしまうだろうにと、ヒヤヒヤしながら見ていました。

 

 全部運び終わるまでに30分ほどかかりました。台車が使えず、重たい袋を両腕に下げて100mほどの距離を何回も往復したので、すっかり疲れてしまいました。家の中に不燃物が溜まる理由がわかったような気がします。老人には結構大変な作業ですし、何かの都合で指定された日に出すことができなければ溜めておくしかありません。

 ゴミ屋敷にしないように、これからはこまめに片付けるようにします。(イデちゃん)

バラバラ大学

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とある蕎麦屋からの風景(マツミナ)

 

 先日、ある地方国立大学の教職員や学生と話をする機会がありました。結論から言うと、上層部と教職員、学生の話がそれぞれ乖離していました。大学という一つの組織のメンバーである、とは名ばかりで、みんなバラバラのように見えます。

 

 上層部は、たくさんのシステムを動かし、改革をしている、順調である、と言います。これまでに文部科学省が打ち出してきた教員が教育と研究に取り組みやすい環境づくり、人事評価システム、学生が学びやすい学習環境などを整えているそうです。

 ところが、教員たちは違うことを話してくれます。改革の結果、会議ばかりがやたらと増え、同じメンバーで同じ内容の会議が1日で3回も繰り返されているというのです。定年で退職した教員の補充がされていないため、残っている教員が必死に穴埋めをしていることも明かしてくれました。人事評価制度は、何を基準に誰がどのように判断しているのか、居合わせた教員が誰1人わかっていないことも象徴的でした。黙って聞いているところを見ると、職員もわかっていないのかもしれません。

 学生も困っています。「ゼミの教員が定年で辞めてしまい、その後の教員もなかなか見つからなかった。今は他のゼミの先生が兼務で担当してくれているけれど、その先生も間もなく定年なんです」と窮状を訴える学生もいました。コロナ禍でリモートと対面の授業が混在しているけれど、学内でのWi-Fiはうまくつながらず、相談に行きたいけれど、窓口もない。そんな話をしてくれる学生も何人かいました。

 

 この大学が極めて珍しいバラバラ大学というわけではありません。国立・公立・私立の別なく、執行部と現場の乖離はよくある話です。問題の根幹には、執行部が改革の意味を丁寧に現場に説明していないことがあるでしょう。けれども、そもそも執行部も国が示した改革の趣旨を理解していないかもしれません。わからないことを現場に説明し、あるいは実現することはかなり難しいことです。

 では執行部が悪いのかというと、そうとも言い切れません。そもそも、東京の大きな大学と、地方の小さな大学が同じような改革に取り組むことが無理な話なのです。軋みが出て当然です。その結果、大学の構成員がみんな違う方向を向いて、文句ばかり言うバラバラ大学ができます。大学の体を成していること自体がもはや奇跡かもしれません。

 不満を言いながらも、「ウチの大学は、先生や先輩との距離が近いです」と満足感を口にする学生がいじらしく見えました。(マツミナ) 

 

 

 

 

ゴミ屋敷にしないために

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南天の向こうに並ぶゴミ袋(イデちゃん)

 

 雪の季節が来る前に家の外回りを片付けようと先週から田舎に帰っています。夏には庭の雑草を相手に苦戦しましたが、今回は物置や庭の隅に集積されている不用品が相手です。

 まずは庭に放置されている植木鉢やプランターです。素焼きの植木鉢の中に残っている土を捨てると、中から大きななめくじが出てきたり、蜂の巣が作られていたりしてギョッとすることも度々です。ヒビが入っているものや汚れがひどいものは割って雨樋の下に敷いたり、不燃物用の袋に詰めたりして、まだ使えるものは10個ずつ重ねて紐で縛りました。

 プラスチックのプランターは劣化が激しく、持ち上げるとバキッと割れたりボロボロ崩れたりして始末に負えません。「こんなもの、なんでとって置いたんだよ、全く世話が焼けるなあ」などと悪態をつきながら、長靴の裏で踏みつけてバラバラにしたのですが、劣化が中途半端なものはしぶとくて壊れにくく、小さくなりません。そのままでは嵩張るばかりなので万能バサミで切り分け、小さくして不燃物袋に詰めました。やっと片付いたと思いきや縁の下にもプランターが。結局、1時間以上かかってしまいました。

 

 次は物置です。引き違いのドアが歪んでなかなか開きません。やっとこじ開けて目に入ったものは気が遠くなりそうなガラクタの集合でした。古新聞や古雑誌、使い掛けの塗料の缶、園芸用肥料の空袋、壊れた扇風機に電気炬燵、張り替えた網戸の残り、カーペット、水道ホースに壊れた蛇口、まだまだあります。テレビを載せる台、ノコギリ、ハンマー、大きなバール、自転車用空気ポンプ、七輪、鍋にヤカン、出て来る出て来る我が家の歴史遺産が。空けてびっくり玉手箱です。よくもまあ、これだけ詰め込んだものだと感心するばかりでした。

 さあ、このガラクタをどう始末しようか。考えただけでも気力が萎えそうな量です。それでもなんとかしなくてはと気を取り直して、とりあえず金属・不燃物、プラスチック、可燃ごみ等に分類しました。大きなものは粗大ゴミで出せばいいのですが、手続きが面倒なので分解して小さくすることにして、今日はコタツとテレビ台を解体しました。

 格闘すること3時間、陽が翳ってきたので外での作業を終わりにしました。まだ、何日もかかりそうな気配です。

 

 家の中や外に不用品(本人は有用な資源というけれど)を積み重ね、「ゴミ屋敷」と呼ばれて迷惑扱いされる家屋の話をよく見聞きします。ゴミ屋敷になるきっかけはいろいろあるでしょう。住人が高齢化して不燃物や粗大ゴミを片付けることができなくなり、不本意ながら屋内や敷地内に貯めておくしかなくなったらゴミ屋敷にならざるを得ないでしょう。我が家とて今は私が片付けられますが、いつまでもできるわけではありません。明日は我が身と思うと他人事ではありません。

 住宅・土地統計調査によると平成30年の全国の空き家数はおよそ848万9000戸だそうです。空き家やゴミ屋敷の増加はこれからも続くことでしょう。社会の衰退を象徴するような寂しい数字です。(イデちゃん)

竜王・MVP・首相

 意外な

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冷めずにお茶をいただける。ありがたや〜。(マツミナ)


 素顔を見せてもらった1週間でした。

 

 まずは、竜王戦を4連勝で制して最高位を奪取し、史上最年少4冠に輝いた藤井聡太さん。小学生の頃から「全集中」で、難解な詰将棋の問題を考えながら歩いていたため、何度もドブに落ちていたそうです。対局中、相手の表情やしぐさを見たりすることなく、ひたすら盤をにらんでいる竜王らしいエピソードです。

 ストイックな全集中の一方で、こんな一面も。運動不足を解消するため、藤井さんは今年春に散歩を始めたました。ところが「行った先から帰るのが面倒なので、すぐにやめました」(2021年11月16日付読売新聞朝刊)。帰るのが面倒だから、散歩をやめるという考え方もあるのですね。妙に感心しました。

 

 今季のア・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれた大谷翔平選手は、いつでもどこで笑顔を見せていることに驚きました。試合時に、ピッチャーは手にしたボールに不正な工作をしていないかどうか審判にチェックされます。疑われているのですから、ピッチャーがいい顔をするわけはない。ところが大谷選手はそんな時でも笑顔だそうです。チェックする側だって、やりたくてやっているわけではない。大谷選手はそれをよくわかっているのかもしれません。

 

 最後は岸田文雄首相。東大受験に3年連続で失敗していました(2021年11月21日付読売新聞朝刊)。高校は開成高校。東大進学者数日本一の進学校です。家柄もあるでしょうから、20歳前後の精神状態はきつかったかもしれません。とはいえ4年前に、開成高校を卒業した自民党国会議員と官僚を組織した会を発足させています。その数は約550人と、驚くべき人数が集まっています。次の足がかりとなる場と、苦い失敗をした場が同じ。岸田さんはこれからどう振舞っていくつもりでしょうか。

 

 素顔はきっと、これから時代がどう変わろうとしているのか示してくれるでしょう。(マツミナ) 

 

 

二人は、なかよし

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錦繍の庭(イデちゃん)


 「考える先生」を目指す学生がお世話になっている小学校の学習発表会を見せてもらいました。コロナ禍にあって学校の教育活動は様々な制約を受けています。保護者に配布された「ご案内」に書かれた「国語や音楽の発展的学習や日頃から取り組んでいる音読を生かしたもの、五感を働かせた子供たちの取組、子供たちが話し合い創り上げたものの発表など様々です。一部、地域行事とも連携し行います。保護者・地域・学校が一体となり、コロナウィルス感染症への感染防止を図り開催いたします。子供たちの頑張りや成長した姿をご覧いただき、拍手を中心とした励ましをいただきたく、ご案内申し上げます」という校長先生の挨拶からは開催に向けた工夫や苦労が伺われました。

 

   私は2年生の「二人は、なかよし」という発表を鑑賞しました。国語の教科書に出てくるアーノルド・ローベルの「お手紙」をもとに構成したものです。プログラムに書かれた紹介には「子供たちは、会場の皆さんと一緒に舞台を盛り上げようと、自分の得意を生かして、歌、せりふ、道具に分かれて、準備を進めてきました。たくさんの手拍子と共にぜひお楽しみください」とありました。

 

 発表会場の体育館の入り口で消毒、検温を行い入場しました。体育館の床には間隔を空けて体育用のマットが敷かれ、参観する保護者はマットの両端に離れて2人が座ります。保護者の参観は一家庭で1人とし、換気のために窓も開けられていました。「声援は拍手でお願いします」というアナウンスに、コロナ禍でなければ必要のない苦労を思いました。

 

 私は校長先生に案内していただいて壁際に置かれた椅子に座ってみることにしました。近くにお母さんと一緒に2歳くらいの女の子が座っていました。お姉ちゃんの発表を見にきたようです。始まるのが待ち遠しくてたまらない様子で、ステージに向かって何やら言いながらお姉ちゃんを探しています。ようやくお姉ちゃんを見つけて立ち上がり、大きな声で名前を呼びました。お姉ちゃんも妹を見つけて遠慮がちに手を振りました。姉妹の視線が交差する素敵な一瞬を目撃してとっても幸せな気分になりました。

 「二人は、なかよし」の発表が始まりました。「みなさんも手拍子をお願いします」という合図に早速反応したのは女の子です。立ち上がって体を揺らして手を打ちながら歌っていました。

 

 コロナ禍で様々な制約が続く中で、学校は苦戦を強いられています。思うようにならない日々が続き、悩みも尽きないことでしょう。でも、今日の学習発表会は子供も参観者もみんな楽しそうで、嬉しそうでした。以前と同じようにはできなくても、なんとか工夫して充実した教育活動をしようと取り組む姿を見て、保護者の方々も納得し安心したことでしょう。

 最寄りの駅まで、幸せを感じたあの場面を思い出しながら歩きました。(イデちゃん)

ツルツルじゃない面接

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彼方に富士山が見える(マツミナ)

 

 「先生、内定出ました!」

 ゼミ生からの一言に、やったやった、と手を取り合って喜びました。長く苦しい日々でした。

 

 ゼミ生は春先には就職活動を始めていました。受けても受けても、結果に結びつかない日が続くうち、どんどん俯きがちになり、「どうせダメだし」と就職活動をやめてしまいました。

 もう誰も自分を必要としない。自分の存在を全否定されたような気持ちになっていました。どこがダメなのか、わからないだけに辛い。自分の学生時代を重ね合わせ、慰める言葉にも詰まっていました。

 

 転機が訪れたのは、先月です。その日も私の前で、泣いていました。泣いたらスッキリしたのか、就職活動で自分を売り込む作戦を変えようと思い立ったようです。

 

 〈自分が学生時代に1番力を入れたのは、「質問力を磨く(Class Q)」だ。これをちゃんと伝えよう〉。

 

 文章を書けるようになりたいから毎日、社説を書き写していること。2年次のClassQで「憲法9条問題」の記事に出会って以来、防衛問題に関心を持ち、毎日、関連記事をスクラップしていること。新聞の隅々まで目を走らせて、スクラップをすることが楽しくて仕方がないこと。スクラップが7冊目まできていること…。入学直後からClassQで学び続けて3年あまり、そこで注いできた熱量のありったけをエントリーシートに書き込んだそうです。

 

 すると、企業が食いついてきたのだといいます。

 「社説を毎日書き写しているのですか? 変わった授業ですね」

 これに対してゼミ生は、ClassQとはどんなクラスか、なぜ書き写す必要があるのか、書き写すことでどんな力がついて来たかを説明します。

 「スクラップが好き? 面白いですね」

 自分の関心のある記事を見つけたときの興奮を、熱っぽく語ります。

 

 これまでも、Class Qについて説明しようとしましたが、うまく伝わらないため、当たり障りのない部活の話などをしていたそうです。当たり障りがないから、面接担当者に引っかからず、結果につながらない。つまりツルツル面接をしていたのです。

 

 大事なのは熱量。伝わらないかも、ではなくて伝える努力なのでしょう。「ツルツル面接」から脱するヒントはそこにあるかもしれません。(マツミナ)

ツルツル面接

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ツルツルじゃない、なんだか魅力的なミカン。品種は何?(マツミナ)

 

 「ちょっといい話」になるのは、イデちゃんと市役所職員がお互いの出会いを大切にしようという思いがあるからかな、と昨日のブログを読みながら考えていました。相手が誰でも一期一会、出会いを大切にしたいと思えば、丁寧に対応するのかもしれません。となると、何も引っかからないのは――。

 

 「今年は異常です。こんなに引っかからない学生ばかりとは」と残念そうに話すのは、IT関係の中小企業経営者。採用面接を重ねる中で、異変が起きていると感じているのです。何も引っかからない「ツルツル面接」が例年に比べて相当に多く、しかも長く続いているというのです。

 中小企業にとっては、学生はまさに「金の卵」。大企業志向の強い学生が、そもそも希望してきてくれないからです。だから社長は、なんとしてもいいところを見つけて採用し育てていきたいという思いを強く抱いています。いきおい面接は「学生本人も気づいていない、きらりと光る何か」を探す時間になります。履歴書を片手に、志望動機、学生時代に力を入れてきたことなどを質問していきます。ところが今年は例外なく、どの会社で答えても通用するような、あたりさわりのない言葉ばかりが返ってくるそうです。当然、採用には至りません。

 いつもなら面接が一段落しているこの時期にも、そうした学生がひきも切らず面接を受けにくるのも今年の特徴とか。聞いてみると、複数の内定を持っているのに就職活動をやめられない学生たちだとわかりました。ツルツルで引っかかりようがないのはお互い様。学生にしても、なんとなく受けたら内定しちゃった。でも、なんでこの会社なのかは自分でもわからない。その結果「どこかにあるかもしれない出会い」を求めて、終わりの見えない放浪を続けているようです。

 「コロナでリモート環境に慣れてしまい、人との関わり方を忘れてしまったのだろうか」と社長は心配しています。

 こうした傾向は他の企業からも聞きました。どこかにあるかもしれない出会いを求めているうちは、目の前の出会いは通り過ぎる風景に過ぎないのかもしれません。(マツミナ)

 

ちょっといい話

 

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ビオラを植えました(イデちゃん)


 「渡る世間に鬼ばかり」なんてドラマが流行ったことがありますが、世の中まんざら捨てたものではありませんね
。「(新入社員に)何が一番向いているのかつかもう」と辛抱強く待っていてくれる社長だっているんだから。そういう出会いを大切にする社会にしたいなあと思いました。今日はちょっといい気分になった話をします。

 

  印鑑登録証明書が必要な用事ができたので市役所に行きました。1階ロビーに各種証明書の自動交付機があったはずだと探したのですが見当たりません。以前設置されていた場所には証明写真の自動撮影ボックスが置かれていました。さて、どこに移されたのだろうと見渡しても、それらしきものはありません。埒が明かないので案内受付に行って尋ねると「自動交付機は昨年廃止されました。発行請求書を書いて窓口にお出しください」と教えてくれました。

 

 記載台に用意された「印鑑登録証明書発行請求書」に記入して窓口に持って行くと「受付順番票と一緒にお願いします」といわれました。「わかりました」とは言ったものの、「順番票はどこでもらうのかな」とうろうろしていると、カウンターの中から青年が出てきて「こちらです」と案内され、交付機のモニター画面に表示された「印鑑証明」の枠を「ここです」と指し示してくれました。

 彼は慣れない窓口で戸惑っていた私の様子を見て、わざわざ席を離れて教えにきてくれたようです。「出来上がりましたら、番号が表示されますのでお受け取りください」と言って自席に戻る青年に「ありがとう」と少し大きな声で言いました。嬉しかったからです。

 

 待っている間にもう一つの用事を思い出しました。かかり付けの医院から「後期高齢者医療限度額適用認定証」という長い名前の書類を、市役所でもらってくるようにいわれていたのです。それも発行してもらおうと思い立ち、市民課のカウンターで「後期高齢者医療なんとかかんとか証明証の発行はどこに行けばいいのですか」と聞いてみました。図々しい年寄りは尋ねる相手を選びません。

 「お客さま、おいくつになられました」「75歳です」

 「それでしたら、こちらにおいでください」と案内されたカウンターには「75歳になられた方」という表示がありました。75歳になると後期高齢者医療を始めとして年金や介護など、手続き更新が必要になることが結構あります。所管する課を横断し、それらをまとめて受け付ける「75歳専用のワンストップインテイク」の窓口でした。

 「年齢、身分を証明するものをお持ちですか」と聞かれ、登録番号が刻印された市民カードを見せると、「わかりました。お待ちください」と言って、すぐに「後期高齢者医療限度額適用認定証」を作ってくれました。年寄りにやさしい窓口です。

 

 帰り際、市民課の前を通る時、先刻の青年を見つけ、もう一度「どうもありがとうございました。おかげさまで用事を済ますことができました」とお礼を言って、いい気分で帰りました。(イデちゃん)

人生をやり直した社長

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どこに立ってるの?(マツミナ)

 

 人生はやり直しができます。いつからでも。イデちゃんに「神対応」と絶賛された社長も「やり直し」をした人です。

 

 社長は起業して10数年間、「神」どころか「人でなし」だったそうです。仕事が終わるまで社員を帰さなかったため、毎月の平均残業時間は、なんと200時間超! 残業代を払っていたことだけが唯一の救い、という過酷な会社でした。本人曰く「仕事できないやつはゴミ」って言い放っていたとか。もちろん社長本人も、自宅に帰るのは月1回でした。

 

 大きな転機が訪れたのは、10年ほど前。1か月ぶりに自宅に帰り、ぼんやりと見ていたテレビ番組でした。

 番組では日本理化学工業株式会社の社長(当時)の障害者雇用取り組みを紹介していました。同社が知的障害者の雇用を始めたのは、1960年。以来、積極的な取り組みを展開し、厚生労働大臣表彰を受けるなど、高い評価を受けていました。雇用された障害者が長く勤めているから、働きやすい職場であることもわかりました。

 理化学工業社長は、インタビューの中で、積極的な障害者雇用をするきっかけは、お坊さんの導きがあったからだと話していたそうです。「人はなぜ働くのでしょうか」と尋ねたのに対し、お坊さんはこう諭してくれたとふりかえっていました。

 「人の幸せとは、人の役に立つこと、人に褒められること、人に必要にされること、人に愛されること。このうち、人に愛されること以外は、仕事でかなえられる」

 

 その番組を見た時の衝撃は今でも忘れられないと、社長はふりかえっていました。

 「オレってなんてダメなんだろう。会社を経営するってことは、幸せを作る機会なんだ。なのに、誰も幸せになっていないじゃないか」。今からでも遅くない。ちゃんとした会社にしようと奮い立ったそうです。

 

 今、社長は「引きこもり」だった彼に何が一番向いているのかつかもうとしてます。できれば長く勤めてほしいと願っているそうです。(マツミナ)

 

 

人生はやり直せる

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明けない夜はない(イデちゃん)


 「引きこもりからの就職」(2021年11月14日、マツミナ)にうれしくなりました。

 

 「真新しいスーツを着ていたんだよね。きっとこの日のために親御さんが買ったんだろうなって思ったらさ、そのまま帰せないじゃないの」

 なんと粋なはからいでしょう。新調したスーツを着て面接に臨んだ本人ではなく、息子の採用試験のために新しいスーツを着せて送り出した親心を受け止め、「腹を決めた」社長の「神対応」に感動しました。

 

 想像するに、面接でのやり取りはパッとしないものだったのかもしれません。採用しようと思わせる決定的な材料がないまま面接の時間が終わりに近づき、どうしたものかと思案しながら目の前に座っている青年を見つめ直した時、彼のスーツが「真新しい」ことに気づいたのでしょう。その時、社長には青年の後ろに息子の再出発を願う親御さんの顔が見えたのかもしれません。「なんとかしよう」と決断した瞬間の社長は「親の目」で彼を見ていたのではないでしょうか。

 

 ミナさんが指摘するように「いったんコースを外れてしまったら」元に戻るのが難しい社会になってしまったようです。「人生には失敗が付き物」と言われても、失敗したら取り戻せないと思えば、臆病と言われようと慎重になるしかありません。でも、社長のような人もいるし、こういう出会いもあることを知れば勇気も湧いてくるでしょう。

 

 「うちはちゃんと仕事を教えるから」という社長の下で、「社会の中で生きていく自信」をしっかり培ってほしいと願うばかりです。

がんばれ青年、人生はやり直せる。(イデちゃん)