idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

ボタンを押すだけ

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ケーキの上の愉快な顔(マツミナ)

 iPadをやっと買い替えました。そろそろ買い替えの時期だとわかってはいながら、決断を先延ばしにしてきました。半年ぐらいは我慢したでしょうか。その間に誤作動の回数が増え、バッテリーの減りもどんどん速くなっていきました。それでも耐えました。ただただ、買い替えによって生じる、データの移し替えという面倒を避けたかったからです。

 結論からいうと、それは全くの杞憂でした。新旧のiPadを近づけただけで、勝手にデータが移っていったのです。こちらは画面に表示されている残り時間をぼんやりと眺めていただけ。私のようなものぐさなユーザーがいることを想定して、メーカーがどんどん賢い機械を開発してくれたおかげです。嬉しい反面、考えてしまいました。こういう賢い機械に囲まれて、私たちはどうなっていくのだろう。

 

 ボタンを押す手に、指が1本しかついていなかった――。

 

 ショートショートの名手、星新一の「ボタン星からの贈り物」の一文を思い出しました。

 果物野菜皮むき器、自動ネクタイ結び器、缶詰を開けたり、ビールの栓を抜いたりする装置、魚の骨をとってくれる装置、食物を口まで運んでくれる装置、服のボタンをかけ、外してくれる装置、乗るだけで目的地へ行ってくれる自動車…。全ては、ボタン一つでOK。つまりボタンを押す指が1本あれば用が足りることになる世界が実現したのです。

 こうした便利な装置は、どれも宇宙人からの贈り物でした。宇宙人は地球の占領を狙っていたのです。地球人は便利な装置の作り方を教えてくれる宇宙人を疑いもせず、とうとう宇宙人を大量に受け入れる装置まで組み立ててしまうのです。 

 

 作品が書かれたのは昭和37、8年ごろ。先の東京五輪の前夜も、日本人は便利な生活を夢見ていました。半世紀以上がたち、2度目の東京五輪が終わった今も変わらぬ傾向かもしれません。

 便利さを追い求める中で、疑い、考えることを忘れていないだろうか。首をひねりながら、データの移行を難なくやってのけるiPadのキーボードを叩いています。(マツミナ)