idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

ムラの中での調和

 

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栗の季節ですねえ(マツミナ)

 

 ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さん(90)の「日本に帰らない理由」、妙に説得力がありましたね。私は朝日新聞デジタルで読みました。

 「日本では、いつもお互いのことを心配しています。とても調和の取れた関係性で、上手く付き合うことが最も重要なことの一つです。他人に迷惑をかけるようなことはしません」(2021年10月6日朝日新聞デジタル

 

 読みながら、ジョニー・デップ主演の映画「MINAMATA」の一場面を思い出していました。水銀中毒による水俣病に苦しむ人々の姿にカメラを向けるユージン・スミス(デップ)に対し、化学会社チッソの社長が札束を渡しながら、撮影をやめるよう迫る場面です。

 

 「社会全体の利益の前では、(水俣病は)無に等しい」

 「(水俣病は)日本人に任せておきなさい。ヨソ者の出る幕はない」

 

 ウチとヨソ。とはいえ、日本人なら全てがウチの構成員になれるわけではありません。それは水俣病で苦しむ目の前の人々を「無に等しい」と言い切っていることからわかります。ウチはさらに小さな単位、ムラに分けられます。そのムラには厳格なルールがあります。調和を乱さないことです。ムラの論理が、個人の尊厳よりも優先されると社長は語っているのだと受け取りました。

 調和を保つためには、余計なことは考えてはいけない。思考は止めておいた方が、ムラの中で生きていくためには大事なのです。真鍋さんの指摘した「調和の取れた関係性」は、ムラで生きていくための知恵なのです。

 

 真鍋さんは日本の研究について、こうも語っていました。

 「最近の日本の研究は、以前に比べて好奇心を持って研究することが少なくなっているように思います」

 ムラで生きていくのに、好奇心は持たない方が安全だからでしょうか。「調和の取れた関係性」によって、私たちは何を得て、何を失っているのでしょうか。(マツミナ)