idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

「人生案内」で広げた思考


 

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朝日に輝く蜘蛛の糸(マツミナ)

 

 彼がいることを隠して結婚生活を続けるゲイ(男性同性愛者)の夫と、それを知らない妻と子ども。本日(10月22日)の「質問力を磨く(Class Q)」では、学生たちはそれぞれこの三人になりきり、考えました。その思考のプロセスは、模造紙に情報カードを貼り付ける形でまとめました。

 教材に使ったのは、10月12日付の読売新聞「人生案内」に掲載された読者の相談です。読者は30代の男性会社員で、裕福な家庭の一人っ子として育ち、両親の望み通りに就職、結婚し、子どももいます。結婚は、社会的な対面を保つためで、相手は上司から紹介された女性。妻と知り合う前からの彼とは今も付き合っています。「彼といる時だけが私らしくいられる時間。彼と別れるのは家庭を捨てるのと同じくらい、私にとってつらいこと」と書いていました。さすがにこのままではいけない、どうしたらいいのか方向性を示してほしい、という相談でした。

 学生にとって最も理解しやすかったのは「妻」だったようです。「妻になりきった」学生は、怒りと悲しみの言葉を書き連ねます。「ウソつき、私をずっとだましていたんです、ゲイであることは関係ない」とある学生は目を三角にして話していました。「人の人生を狂わせるようなことをしている。損賠賠償と月10万円の養育費を支払ってほしい」と償わせるための具体策を出している学生もいました。

 「お互い苦しむ関係を増やさないようにする社会体制を整えよ」という主張をする男子学生もいました。ゲイであることを隠さずに暮らせる社会にするとしながらも「夫とは離婚する」。

 子どもの視点も、学生たちは素直に心情を吐露していました。「両親と今後も一緒に暮らせる方法を考える」と思考命題を立てた学生は、性的少数者に対する社会の理解をどのように向上させたらいいのかを考えながらも、妻である母への配慮も見せています。「社会がいくら認めても、母が認めていなければ意味がない」「母にどのように受け止めているのか聞いてみよう」と健気な決意を書く学生もいました。

 学生が最も苦戦したのは、相談者本人の立場でした。「結婚生活を維持しながら、彼とも関係を続けられるよう理解を得よ」と思考命題を立てた学生ですら、最終的には「そもそも妻に隠し事をしているのは不誠実だ。妻に打ち明けよう」と結論づけていました。

 大きな教室に張り出されたたくさんの模造紙を見ながら、1人の学生は「明日は我が身。身につまされた」と話していました。1枚の小さな記事が、学生たちにリアルな生活を考えるきっかけになったようです。(マツミナ)