idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

想像力の欠如と社会の劣化

 右手の親指の先に、半世紀ぶりにアカギレができました。絆創膏を巻いたら、指紋認証で行っていたスマホのロック解除ができなくなってしまいました。使うたびにコードを入力するのは、面倒です。PCのタッチパネルも感知してくれません。たった一本の指先の不具合で、結構ストレスが溜まりました。

 アカギレに悩まされていたら、もっとでっかいストレス源が飛び込んできました。現職教員がわいせつ行為をした疑いで逮捕されたという報道です。しかも、我が杉並区。

 事件を知った誰もが子どもたちの心の痛手を気遣い、この教員のしたことの愚かさに「何を考えているのだ」「なんてことを」と憤慨し、教員を非難するのは当然です。最大の被害者は、この教員が担任する学級の子どもたちです。大人や社会に対する不信や不安は、理想や正義の軽視や否定につながりかねません。学校や教育への信頼は地に堕ちます。

 地方公務員法33条に「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」とあります。非違行為*をした教員は地方公務員法違反も問われ、懲戒処分を受けることになりますが、それでことは終わりません。失った信頼を取り戻すために学校を始めとする関係者は膨大な非生産的エネルギーの消費を強いられます。私がこの新聞記事を読んで「でっかいストレス源」と言ったのはそのことを指します。

 この教員は処分決定まで勤務から外されますから後任が必要ですが、年度末に正規教員を求めることは困難です。校長は保護者に対する説明や区教委・都教委への報告を求められます。学校に押しかける報道関係者への対応も必要です。学校全体が落ち着かなくなりますから当該学級だけでなく、全校児童への配慮も欠かせません。正義や真理を学ぶ場である学校で、こんな非生産的で理不尽なことのために膨大なエネルギーと時間を費やすことを強いられるのです。事の重大さを知れば知るほど、暗澹たる気持ちになります。

 一体彼は何を考えていたのでしょうか。私は、何も考えていなかったと思います。少しでも自分の職責や社会的身分を思えば、こんなことをするはずがありません。恐ろしいほど想像力が欠如しています。これから捜査を通していろいろな事実が判明し、あれやこれやの理由や動機が明らかにされるでしょうが、想像力の欠如こそ最大の原因であると考えます。

 夜の8時過ぎに銀座に繰り出す国会議員の想像力の無さにも呆れるばかりですが、最も豊かな想像力が求められる教師という仕事を考えると事態は重大です。想像力を支えるのは考える力です。

 ミナさんが「学びを深めるには、立ち止まって考える時間が必要ですが、大学の教職課程は詰め込みすぎで、それが難しい状態」と書いていました。それが想像力に欠ける先生を生み出しているとしたら教職課程のあり方や教員採用の方法も改めて問題にしなくてはなりません。

 思えば、日本の誇る「日本型学校教育」を支えてきたのは人間性豊かな想像力あふれる教師たちでした。社会のあらゆるところで劣化が進んでいます。今こそ「考える先生」の育成が急務です。(イデちゃん

 *非違行為:非法行為と違法行為のこと。行政職員などが、公的もしくは私的に法に反している行為をさす。