idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

コスト・コスト・コスト

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青に緑、白に赤も加わって梅盛り(イデちゃん)

 大学に納入する学費の他に、入学前に予備校等に払った費用や有形無形の関連費用までコストの範囲を広げたら、卒業して大企業に入り、相当いい給料をもらわないとペイしないかもしれませんね。だから、何の役に立つかわからないような授業のために、時間をかけるのはもったいないと思うのかな。ま、本人が学費と生涯賃金の比較までして考えているとは思えませんが。

 だとすれば「大学とは食うことを心配しないでその問いを持つことができ、果ての果てまで考え、対話するところです」なんて言われたって、ピンとこないでしょう。3年生になれば就活も始めなくてはならないし、そんな呑気なことを言っていられないよという声が聞こえてきそうです。

 

 ところで「それなりに権威のある実証試験で2年後90%の確率で壊れるとされている商品がある。そして、その商品の価格は400万円もする。あなたは、その商品を購入するだろうか。」(山本秀樹「世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバダイヤモンド社 2018)と問われたらどう答えますか。多くの学生の答えは「そんなコスパの悪い商品は買わない」でしょうね。誰でもそう思うでしょうね。400万円出して2年で壊れるような「モノ」を買う人はいません。

 では、このコスパ最低の商品が「大学の提供する教育の中身」だとしたらどんな反応をするでしょう。学費を出している親だったら「高い金出して使い物にならない教育を受けるより、社会に出てすぐ役に立つ技術や知識を身に付けさせた方がいい」と考えるのは当然でしょうね。身につけた技術や知識が10年後には無用になっているかもしれませんが。

 

 高額な学費を払って大学で学びながら、コスパにこだわって思考停止でいることこそ、最もコスパの悪い状態です。「時間も労力もかけずにメリットを得たい」学生のコスパ感覚を非難したくなるところですが、思考停止の責任の半分は「400万円出しても買いたくなる商品」を提供してない大学(教える側)にもありはしませんか。

 この状態を打ち破る力は「魅力ある授業」です。どんな授業が魅力あるのかは学科や専攻によって違うでしょうが、少なくとも学生から「昨年の私なら答えられなかっただろう。答えられるのは自分の変化に気づいたおかげである。課題をやっていくことを通してやっと得られるものが見えてくることをこの授業で学んだ」まず挑戦すること。結果はその後についてくる」などと言うセリフを聞くことができるような授業であることは必要な条件でしょう。

 

 世の中は「やってみなければわからない」ことばかりです。不安だからコスパが幅を利かすのです。少しは世間を知っている大人の役割は「やってみなければわからないこともある。無駄と思わないで挑戦してみろ」とそそのかし、「あの人がそう言うならやってみようか」とその気にさせること、そして「やってみればわかる」と自信を持って言える「身近なモデル」になることかなと思います。失敗も成功も含めて。

 

 と偉そうに言ったものの、なんでも否定しぶち壊すことに生きがい?を感じてきた私たちの世代の一番苦手な役割なのです。もっと若い世代にお願いするしかないと言うのは無責任ですね。(反省のイデちゃん)