学生のコスパ感覚は思考停止
今日の花粉はいつにも増してエネルギッシュです。口だけではなく、目にもマスクをして歩ければいいなあと本気で考えるほどです。エネルギーがあるのはいいことではありますが、頑張れ花粉、とは応援できません。
「課題をやると、どんなメリットがありますか」
高校生からの質問に、学生はどう答えたか。
「やってみなければわからない」
いやあ、しびれました。まず挑戦すること。結果はその後についてくる。こんなことが言えるようになっていたのです。この学生は授業後のリフレクションシートでさらに詳しく書いていました。「昨年の私なら答えられなかっただろう。答えられるのは自分の変化に気づいたおかげである。課題をやっていくことを通してやっと得られるものが見えてくることをこの授業で学んだ」
メリットを得たい、しかも時間も労力もかけずに――学生のコスパ感覚は思考停止そのものです。ここは「学問の府」。私立大学の学費は高額です。わざわざそこに在籍しながら思考を止めたままでいる愚かさに気づいてほしいものです。
コスパ感覚が悪いわけではありません。本気のコスパ計算には相当な思考力が必要になるはずです。誰が何に対してどんなコストを負担しているか。パフォーマンスをどう数値化するか。
まずは課題に取り組む学生自身の時間と労力ですね。学生が大学に在籍するには学費が必要です。大体は親が負担しています。私立大学には「私学助成金」として私たち国民が納めた税金も入っています。学生が大学に在籍して授業を履修するために、たくさんの人がさまざまな形で支えています。コストの範囲を学費以外にも広げたらどうなるでしょうか。例えば、大学入学前に予備校に通っていたら、その費用も計上する必要があります。視野を広げると、頭から爆弾が落ちてくる危険もなく、のんきに「ラクタン」を探していられるのは、日本だからです。となるとそのために誰がいくら負担しているのかも考えなくてはいけません。際限がないので、次はパフォーマンスを考えます。こちらにしてもごく限定的に。
Class Qではポスターやチラシを作らせています。多様な表現方法を一つでも多く学んでほしいからです。当然、学生からは「美大でもないのに、なんで?」と不審がられます。ある日、学生からこんな報告がありました。インターンシップ先の企業から「チラシを作る」課題が出されたとか。他大学の学生はアイデアすら出せなかったそうです。「何でもやってみることが大事ですね」と学生は話していました。やってみなければわからない。至言です。(マツミナ)