idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

手間を省くとどうなるか

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3時間かけて炊いた小豆は、我ながらいい出来です(マツミナ)


 イデちゃんのマイブームは分解ですか。楽しそうですね。写真を撮るときの表情が目に浮かぶようです。

 私は今、ぜんざい作りにはまっています。このお正月、せっかくだからと丹波産の小豆と讃岐の和三盆を使って炊いたことがきっかけです。どちらも我が家にとっては「超高級品」。茹でこぼしてザルにあげて洗い、そこから小豆が顔を出さないように時折さし水をし、あく取りもしながら、3時間かけて炊きました。

 出来栄えは、これまでで最高です。やはり材料が高級だと違うなあと食卓で感想を話すと、娘から「それもあるだろうけれど、工程はいつもと同じ?」と質問されました。そうなのです。工程は全く違います。実はいつも圧力鍋で炊いていました。わずか15分ぐらいでできあがるからです。手間を省けば時短はできても、舌にエグミを残す仕上がりでした。

 そこで今度は、いつもの北海道産小豆とふつうの砂糖を使い、3時間コースで炊いてみました。なんと、おいしい! 材料よりも工程が味を左右していたことがわかりました。再度実験しても同じ結果が得られました。

 

 前回、学生の「職種の研究」ポスターに対して、企業人から厳しい言葉をいただいたことをお伝えしました。「やりがい」や「感謝」といった言葉で麗々しく飾っていても「働く現実がわかっていない」と。

 その通りです。それよりも問題なのは、学生たちの悪いクセ「コスパ」感覚が顔を出し、質問する手間を省いたことでしょう。最小のエネルギーと時間で、できるだけ多くの「成果」を得たいと考えるコスパ感覚です。

 発揮してほしかったのは「質問力」です。質問を武器にして「働く現実」に斬り込んでいく。給与はいくらか、昇給や昇進はあるか、他社の同名職種と仕事内容や待遇がどう違うのか、育児や介護を抱えた人でも働けるか、将来もこの仕事はあるか……。知らないからこそ浮かぶたくさんの質問で、その職種で働く現実を浮き彫りにすることができたはずです。

 けれども学生は、そうしなかった。質問が増えれば、調べることも増えて、収拾がつかなくなり、締め切りに間に合わないかもしれないから。同じテーマで書かせた論文でも同様のことが言えます。だから「就活生に見てほしい」と前置きしながらも、「やりがい」があって、お客様から「感謝」を受けられる職種、としか書けなかったのです。

 

 「実は、質問を捨てていました」。今日の授業で学生たちが打ち明けてくれました。締め切りから逆算して早めに着手することも思いつかなかったようです。コスパ感覚、最小のコストで最大の成果を得ることが「よいことだ」と、いつ、どこで学んでくるのでしょうか。

 手間を省くことのつまらなさに気づかせてくれるのは、やはり「最高の出来栄え」。そこにたどり着いてもらわなければ。(マツミナ)