idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

おじゃま虫になった教員免許更新制

 

f:id:Question-lab:20210712173906j:plain

嵐の去った後に(イデちゃん)


 「教員免許更新制」廃止の方針、私も
「そうですか」と簡単に納得する気にはなれません。「30時間以上の講習や3万円ほどの受講料が教員の負担となっている」のが理由だそうですが、何やら胡散臭さを感じるのです。

 第一次安倍政権のもとで教育再生実行会議が鳴り物入りで進めた制度です。英語の民間試験活用の議論の時、「身の丈に応じて」と言い放って不興を買った方が、教員の「30時間以上と3万円」廃止の理由に掲げているのですから、眉に唾でも付けたくなります。

 

 そもそも「教員免許更新制」制定の目的は「不適格教員の排除」にあったと言われています。当然、「何をもって不適格とするのか」が問題になりました。「指導力不足」の教員を不適格とするだけでなく、教育委員会や校長の意に沿わない教員を排除するための制度ではないのかという指摘もありました。議論の末、「不適格教員の排除」を目的とするのではなく「その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すもの」(文科省)ということになったのですが、内容が役に立っていると考える教員が半数にも満たないような講習で「自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得る」のはムシが良すぎたようです。

 

 教員は、免許更新があろうとなかろうと「社会の尊敬と信頼を得る」ためには不断の「研究・修養」が必要です。教育基本法第9条には「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」と規定されています。さらに、教育公務員特例法第21条では「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」と重ねて研修が義務付けられているのです。

 同法第24条では「公立の小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等に対して、その在職期間が10年に達した後相当の期間内に、個々の能力、適性等に応じて、教諭等としての資質の向上を図るために必要な事項に関する研修を実施しなければならない」と定めています。

 これだけ法律で「研究と修養」が義務付けられているにもかかわらず、屋上屋を架すような「教員免許更新制」が必要だったのは、やはり「不適格教員の排除」にあったのではないかと勘ぐりたくなるのも人情というものです。

 

 これほど無理して作った制度を、なぜ萩生田文科大臣は廃止すると言い出したのでしょう。もしかしたらこの制度が邪魔になったのではありませんか。教員不足を補うために「ペーパー免許教員」の掘り起こしが必要となり、10年間現職を続けた教員に30時間も研修させる根拠が薄くなりました。また、免許状を持っていなくても優れた知識経験等を有する社会人を教員として採用しようという取り組みも活発です。今後の教員養成や教員免許取得の弾力化等、民間と提携した新たな「教育人材市場の開拓」に向けた動きも見られます。そのためにはこの際、お邪魔虫になった制度を「働き方改革と教員の負担軽減」という美しい理由で葬ってしまおうと…。下衆の勘繰りですかね。(イデちゃん)