親ガチャ・ガチャガチャ
恥ずかしながら「親ガチャ」なる言葉を知ったのはつい先日のことです。家人から「韓国で親ガチャが話題になっているみたいだね」と話をふられたことがきっかけでした。聞き慣れない語感に首を傾げてしまいました。オヤガチャ? 文字すら思い浮かびませんでした。
どんな親のもとに生まれてきたかで人生が決まる、そんな人生観を示す言葉だそうです。ガチャガチャ――スーパーや家電量販店などの一隅にあるカプセル入りオモチャの販売機。何が出てくるかわかりません。
そういう意味であれば、「韓国で親ガチャ」が話題になるのはうなずけます。映画「半地下」でも描かれていたあの社会を思い出し、妙に納得しました。いい親のもとに生まれたら、豪邸に暮らして、広大な庭でパーティーを開けます。そうでない親のもとに生まれると、大雨の時に半地下の家は大洪水となり、避難所生活を余儀なくされます。
この言葉は当然、日本の若者の間にも浸透しているようです。
本日の読売新聞朝刊(10月26日付朝刊)で、土井隆義・筑波大学教授がこんな解説をしていました。若者は他者による評価にさらされ不安で仕方がない。そんな中で最も安定した基盤は自分が生まれ持ったもの。「変わらない基盤で安心したいという気持ちが、親ガチャに当たれば自信を持てるし、外れれば仕方がないという諦めとして広がっています」と分析しています。
経済格差が広がっているのに、生活への満足度が高くなっているその根底には、親ガチャ心理が働いていたようです。親ガチャで人生が決まるのですから、「人生への期待水準が下がり、その落差が狭まったため不満が減っている」(土井教授)というわけです。
生活への満足度が高ければ、社会の現状への疑問も湧いてはこないでしょう。何があっても、親ガチャの問題、時の運。どこか他人事です。ひょっとしたら、学生からなかなか質問が出てこないのは、この他人事だという感覚があるからでしょうか。(マツミナ)