たたけよ、さらば開かれん
先生という仕事をしていると、必ず一度は「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」という問いかけに出くわします。あなたが先生だったらなんと答えますか。
知りたい、できるようになりたいという欲求は程度の差こそあれ、どの子も同じように持っています。初めは、その内容も方向性も未分化で、漠然とした欲求や期待であったものが、だんだん内容が形作られるようになり、そのためには何をしなくてはならないかということも、子どもなりに理解しはじめます。それでも、「なぜ」と聞きたくなるのは、今やっている勉強が、そういう自分の欲求や期待とどこで繋がっているのかが見えなくなってしまって、義務感や脅迫感に支配された苦痛としか受け止められなくなったときです。
高校の先生に面白い話を聞きました。授業中は居眠りかおしゃべり、教科書は学校のロッカーに置きっぱなし、勉強なんて大嫌いって高校生3年生が、「先生、これなんて読むんですか。どういう意味ですか」と聞いてきた。手にしていたのは自動車学校の運転教本。見れば赤や緑のマーカーで線が引かれ、教科書には付けたことのない「学習の跡」がある。そう、18歳になると運転免許を取得することができるのだ。そのために道路交通法の法律用語や教本に出ている専門用語にルビを振って必死に読んでいたのです。
「鬼滅の刃」が掲載された新聞を買うため、朝から駅の売店やコンビニを走り回った若い人たちは、どんな出会いを手にしたでしょうか。義務感や脅迫感に支配された出会いでなく、学びの扉を開いてくれるような出会いを期待したいですね。
求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、 さらば見出さん。たたけよ、さらば開かれん 。(イデちゃん)