idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

切り分けて、言語化する

f:id:Question-lab:20210114201832j:plain

にらんではいても、逃げる気配はない。これまでの経験で何かを学んだのかな(マツミナ)



 チャイルドシートを切り分けるなんて、イデちゃん、やりますね。切り分けると言えば、ずいぶん前にイデちゃんが私に語ったひとことを覚えていますか。

 

 「知は大きな塊なんだよ。それを丸ごと子どもが飲み込むのは無理でしょ。だから薄く切り分けて、スライスにして渡す。このスライスが『教科』だよ」

 かっこいいひとことでした。

 

 昨日の授業「質問力を磨く(Class Q)」では、学生たちに自己点検をしてもらいました。秋学期でどんな力がついたのか、何が課題として残っているのか、時間を短く切って自己分析し、ノートに書いてもらうのです。

 例えば、「質問をつくる」の後なら、「前よりも短い時間で質問が浮かぶようになった」という成長や「たくさん質問ができない」などの課題を書けばいいのです。ところが、学生は例外なく苦戦していました。眉を寄せて考え込んでいる表情が、パソコンの画面に並びました。先生や周囲の大人に評価してもらうのに慣れきっていて、自分を点検してこなかったのですね。自分の行動や思考を切り分けて、これまでと比べてどうなっているか、言語にするのが難しいようです。

 実は、そんなことになるだろうと想定して、この課題を出しました。「職種の研究」の際、どの学生のポスターや論文にも「リアリティー」が乏しかったのは、自分の経験を切り分けて言語にし、自分の中に留めておけなかったこともあるのではないか、と考えたのです。

 ほとんどの学生はアルバイトをしています。アルバイトを選ぶときに、まず時給や勤務時間を見るはずです。「やりがい」や「周囲からの感謝」は、働き始めてから得ることでしょう。そうした経験は言語にしてこそ、学びに生かされます。「やりがい」が職種の魅力として前面に出てしまった背景には、どうやってアルバイトを選んだ判断基準や、働く中で何を感じたかといった経験を忘れてきたことがあるのではないでしょうか。

 

 ある学生は、その日のリフレクションシートでこう書いていました。

 「私は小学校から大学まで、どれほど早くゴールにたどり着けるかを極めるように生きてきた」。数か月かかるドリルや問題集を1か月で終えるほどのスピード勝負で頑張ってきたそうです。それは自分に何をもたらしたのか、何を学ばせなかったのか。「今一度、白紙に戻して考える勇気を持ちたい」と結んでいました。

 切り分ける勇気は、手間暇以上の何かを私たちに与えてくれると思っています。(マツミナ)