idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

「とりあえず、やってみたら?」

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こってり甘い栗のケーキ。こうでなくちゃ(マツミナ)


 「考える先生」を目指す学生を連れ、プロジェクトの舞台となる公立中学校に行ってきました。もちろん、イデちゃんも一緒です。着慣れぬスーツ姿の学生の表情はこわばっています。あれ? 髪の色が黒く変わっている。染めたの
ね。「はい、やっぱり…」と学生は言葉少なに返事します。相当緊張しているようです。

 

 校長、副校長の二人が校長室で迎えてくれました。二人には事前に学生が書いた「1年間の課題と目標」を届けてありました。

 学生は自分の課題を「リーダー性のなさや安定感の欠如」と考えています。その課題を解決するために、ここでの過ごし方を記述していました。概略を紹介します。

 

 〈1年間を通して

  朝の会から放課後まで見れるものは見る

  生徒との関わりを大事にする

  授業を見学させてもらう

 

  4月 生徒を知る

  5月 生徒を知る、生徒に知ってもらう…〉

 

 毎週1回通う中で、生徒といかに距離を縮め、信頼を得るかを一生懸命に綴っています。目指すは「生徒や保護者から相談してもらえる先生」のようです。

 関係者が顔を揃えたところで、実務的なことを確認しました。

 ・学生は来るたびにその日の気づきをリフレクションシートにまとめ、提出

 ・学校側も気づいたことをまとめ、共有する

 ・メンターは随時、学校を訪問し、学生の様子を把握

 ・中学校の生徒には学生を「インターン」と紹介する

 ・居場所として、校長室か職員室などを提供

 

 実務を詰めるほど、学生の顔がこわばっていくようです。やっと笑みが見えたのは、校長の一言でした。

 「とりあえず、やってみたら? 遠慮はいらないから。自由にやってほしい」。

 学生の力みきった肩が少しほぐれたように見えました。

 

 学習指導要領こそないものの、大学教育でも「自由」の入る余地は限定されています。大学は3ポリシー(入学者受け入れの方針、教育課程編成・実施の方針、学位授与の方針)の策定と公表が義務付けられています。どんな授業を配置するかはその中で決まります。それぞれの教員はこれを受け、年間のシラバスを書きます。シラバスを書くのは新年度の始まる2、3か月前。どんな学生が履修するのかもわからない状況で書くために、学生と授業のレベルが合わないことも珍しくありません。必修が多いことも、最近の大学教育の特徴でしょう。学生の自由に任せたら、学位授与の方針で示した「モデル」にたどり着けないからでしょう。自由や個性を重んじるはずの大学が、型に嵌めようとするのは不思議です。型にはめるのは考えなくていいから気楽かもしれません。

 

 今日、学生は上履きを持参していました。脱いだ革靴をビニール袋に入れ、背負っていたリュックにしまっていました。学校を訪問する際には何が必要なのか、学生は事前に考えたようです。

 「考える先生」を育てるプロジェクト、始まりました。(マツミナ)