idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

Critical thinking

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排水口を描く美大生。「見えないものを描きたかった」。すてき(マツミナ)

 「質問力を磨く(ClassQ)」の科目名は、英語版シラバスだと「Critical thinking」と表記されています。日本語の新聞を教材に日本語で進めている授業なので、わざわざ口にすることはありません。ただ時折、その意味をかみしめています。

 一般的に「批判的思考」と訳されているこの言葉を、学生たちには「全てを疑う」「思考を止めない」と説明しています。「批判」と聞くと、学生たちは身構えてしまうからです。「アラ探し」「戦闘モード」に変換してしまう学生もいます。そこでこう付け加えています。頭の中で「?」を出し続け、目の前の新聞も、私の話も含め、全てを疑いなさい、と。その過程で、きっと「ないものが見えてくるはずだ」とも伝えています。

 これは新聞記者として駆け出しの頃、たたきこまれた思考です。「社会の問題点を探せ」「制度の隠れた欠陥を見つけろ」「声なき声を拾え」……。それが新聞記者の使命だ、とずいぶん言われました。もちろん「Critical thinking」なんてしゃれた言葉は使われていませんでした。

 

 今日もZoomでClass Qを開きました。教材には、エア・ドゥとソラシドエアが経営統合を検討していると報じている記事を使いました。1面と経済面とで大々的に展開されています。

 記事を読んだ学生たちに尋ねました。「この記事にないものは何か」と。一人の学生が答えました。「社員の視点です」。記事には、コロナ禍で両社とも経営が悪化していることや計画の概要、業界に与える影響は書かれていました。けれども社員として最も気になる、待遇や働き方がどう変わるのかが書かれていないと気づいたのです。Class Qで学んで4年目になる学生です。

 

 「考える先生」を目指す学生も、毎週通う中学校で「ないもの」をあぶり出そうとしています。昨日提出してきたリフレクションシートでは「生徒の成長」に着目していました。授業前にどのように準備しているか、私語、服装、授業中の様子、休み時間の過ごし方の五つの観点から、1年生と2年生を比較し、表まで作っていました。例えば授業準備だと、1年生は「遅れがち」、2年生は「素早い」。服装については「小学生が来ているような服の1年生」に対して「2年生は流行を取り入れている子が多かった」と描写していました。1年から2年への成長の過程で、何がこうした変化をもたらすのか、必死に考えているようでした。

 目は生徒だけでなく、先生に対しても向けられていました。たまたま学校訪問に来ていた自治体の指導教諭から「(教員になってから)3年目の先生まで指導する」と聞かされたそうです。学生はこの制度の問題点がこう見えたようです。

 「若手の先生の方が授業の工夫がなされていた。授業評価アンケートでも、若手の先生の方が評価は高かった。『3年目まで』と区切るべきではなく、授業評価の低い先生を指導すべきではないか」。制度に慣れている方々には見えないものが見え始めてきたのだとしたら。ますます面白くなりそうです。(マツミナ)