お母さん、子どもに紙と鉛筆を
今日は、家電量販店にiPadを見に行ってきました。何を隠そう、私はApple愛好者。デスクトップ型パソコンにノートパソコン、iPad-proも持っているにもかかわらず、新機種が気になっていたのです。
結論から言うと、商品を見るどころではありませんでした。私の横に立っていた女性と店員の会話につい聞き入ってしまったからです。女性が買おうかどうか迷っていたのは、一番シンプルなiPadでした。
「どなたがお使いになるのですか」
「子どもに使わせたいんです。来年小学校に上がるので」
「どんなことをさせたいのですか」
「字を書けるようにしたいし、絵も描かせようと思っています」
「それなら、こちらで十分です。お子さんは今、何を使っているのですか」
「私のスマホを使っています。でもYouTubeばかり見ていますが」
こういう問い合わせが多いのでしょうね。店員は慣れたものです。でも傍らで聞いている私は、落ち着いてはいられません。
いや待ってよ、お母さん。お子さんにはまず紙と鉛筆を渡してくださいよ。鉛筆だけではなく色鉛筆、ペン、クレヨン、絵の具、いろんなものを手に持って、紙の上に自由に世界を広げるのがどれほど楽しいか、知ってもらってくださいよ。
第一、iPadは子どもが自由に絵を描くには狭いですよ。大きな字をたくさん書いて並べるほどのスペースはないですよ。
「Society5.0時代に生きる子供たちにとって、PC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムです」――2019年12月19日に萩生田文部科学大臣が出したメッセージです。「個別最適化」と「創造性を育む」ことを掲げて、1人1台端末と、高速大容量通信ネットワーク整備の費用が盛り込まれた令和元年度補正予算案の閣議決定を受けて出されました。
鉛筆やペンを持って書くことと、PCで打つことでは脳の働き方が異なってくるのは、いろいろな研究データが証明しています。持たせるだけで「個別最適化」「創造性を育む」が実現されるわけではありません。何にどう使わせるか、誰がどう支援するかが問われます。
メッセージを見たときにも危うさを感じました。今日、こういう形で各家庭に浸透していることを目の当たりにして、ぞっとしました。親にしてみたら、子どもが心配です。うちの子が教室で使えなかったらかわいそうと考えたのかもしれません。
こうなったら私にできるのは念じるだけ! 「お母さん、子どもに紙と鉛筆を~」
女性は結局、買わずに帰ってしまいました。Appleさん、ごめんなさい。でもやっぱり言いたい。子どもにはまず紙と鉛筆を。(マツミナ)