idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

100取材して99捨てる

 

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学生たちのポスター。付箋は、他チームの学生からの質問(マツミナ)

 昨日、ポスター発表会を開きました。職種と役割をキーワードに、学生たち14チームがIT企業のソアーシステムと食品メーカー、月島食品工業の2社を取材し、ポスターにまとめて発表しました。小さな発表会ではあるけれど、学生たちは全員が緊張した表情でした。メモを持つ手が震えている学生も目につきました。

 きれいなポスターに仕上がってはいました。凝ったデザインで、配色にも気を配り、文言にも気を使っていたようです。けれども予想通り、企業の方々からは厳しいコメントをいただきました。

 

 ソアーシステムのWさんからは「何を捨てたんですか」。仕入れた情報を羅列しているだけで、何を伝えたいのかわからない、と指摘されたのです。月島食品のSさんもこう批評しました。「自分の気になったことを書いたメモ帳みたいなものですね」

 さらに悪いことに、緊張していたこともあって、メモを読み上げたり、壁に向かって発表したりする学生が目立ちました。伝わらなかったのです。

 

 「100取材して99捨てる」――新聞記者としての駆け出し時代に、繰り返しこう言われました。社会の問題をすべて載せるには、新聞は狭すぎます。限られた紙面で、読者に伝えるには何を残し、何を捨てるべきか、大量に積み上がった取材メモを前に呻吟したものでした。授業中にもこの言葉を使い、何を判断基準にし、何を捨てるかが、人に伝えるには重要だと伝えてきたつもりでした。私の伝え方に問題があったのです。

 

 学生たちの書いたリフレクションシートには例外なく、お二人のコメントが引用されていました。

 「自分自身、ポスターというよりも、小中学校の自由研究の内容を書いているようなものであったと思った。まずポスターとは何なのかを話し合うべきだった」

 「捨てる勇気は、パッと内容をつかめるものにするために必要だ。文字を羅列したものはただの発表資料だ。ポスターを理解していなかった」

 落ち込むばかりではなく、これを糧にしようと学生たちは書いていました。7月には再度、ポスター発表会を開きます。

 「自分たちの作品に何が足りなかったか、明確になった。これは次回の最終発表をやりやすくなると同時に、ハードルが上がるということでもある。今日いただいたコメントをもとにより良いものを作る」

 落ち込んでなんていられない。自分たちに発破をかけると宣言しているのです。

 

 学生だけでなく、企業人も、そして私も反省しました。「伝える」と「伝わる」は違う。届いていなかったことを認め、授業を練り直していきます。(マツミナ)