idematsu-qのブログ

屋根のない学校をつくろう

失敗こそが学び

f:id:Question-lab:20211018175911j:plain

弧の部分の二重曲線、見えますか(マツミナ)

 

   いま、「糸かけ曼荼羅」という手芸にはまっています。木板に釘を打ちつけ、その釘に糸をかけ、曼荼羅模様を創りあげていくものです。板の材質や色、木目、釘の色や配置、糸の素材や色、かけ方によって変わるため、どんな作品になるか、完成するまでわかりません。無心に糸をかけていく過程は、自分と向き合っている静かな時間でもあります。そんな面白さにひきつけられて、月に1回通う教室を楽しみにしています。

 先日、自分なりの糸のかけ方と色の組み合わせを思いつき、挑戦しました。結果は失敗でした。なんだか違和感のある二重曲線が、糸の中に出現していたのです。この写真でおわかりになりますか。作品を見た先生から指摘を受けました。「反時計回りに糸をかけましたね」。確かに先生からは「この部分は時計回りで」と教えられていました。反時計回りでも同じではないか、と勝手に解釈して進めていたのです。

 「人の話をよく聞きなさい」とは、私が授業中に言うセリフだったはずです。ああ、恥ずかしい。慌てて糸を切り、作品を作り直そうとして、またはたと思い出しました。「失敗こそが学びの始まり」。これも学生にしょっちゅう伝えている言葉でした。

 上智帝京大学で開いている授業「質問力を磨く(Class Q)」では、学生に社説の視写を課しています。社説を書き写すだけです。ただ、その時に大事なルールがあります。間違えても消しゴムを使わないで二本線を引いて、その横に正しく書き直すことです。間違えたという事実よりも、なぜ間違えたか、そこを考えてもらうためです。

 学生はその中で、自分の文章の癖や学習の仕方、生活リズムを見直していきます。例えば、ある学生は「自分だったらこう書く」というふだんの文章の癖が出てしょっちゅう間違えていることに気づきました。自分の文章と社説の文章を見比べて、どちらが読みやすいかも考えたようです。苦手な字に気づいた学生もいました。

 書き始めてどのぐらいの時間から誤字・脱字などのミスが頻発してくるかを見る中で、自分が集中できる時間と時間帯を考えた学生もいました。その学生の場合は、40分を超えると誤字・脱字が増えること、夜に視写をするとミスが多いことがわかり、朝起きて視写をする、45分以内にいったん終えるという生活リズムと学習の仕方を学びました。「ここで間違えたのは、食べていたお菓子が妙においしかったから」という学生もいました。食べながら目の前の学習に集中するのは、至難の業です。

 「失敗こそが学び」。この作品を大切にします。(マツミナ)